2020年3月12日木曜日

COVID-19関連論文


Liao et al., "The landscape of lung bronchoalveolar immune cells in COVID-19 revealed by single-cell RNA sequencing"

感染者数が全世界で12万人を超え、ついにWHOからパンデミック宣言が出てしまったCOVID-19 

国内では検査態勢や予防対策を巡って専門家の間でも意見が分かれるなど、正しい情報を得るにはそれなりの知識を積極的に持つことも大切だと考えるこの頃です。


震源地の中国では先日、深圳市第三人民医院中国のチームが、Chromiumを使ったシングルセルレベルのVDJ解析とRNAシーケンス(scRNA-seq)を使って、3人の重症および3人の軽度のCOVID-19患者と、8人のこれまでに報告された健常肺コントロールからの、気管支肺胞の洗浄液(BALF)での肺の免疫微小環境を解析しました。これがmedRxivにのっています。
この大変な状況下でシングルセル解析をやって論文にもするなんて、凄いですね。このように中国の医学研究レベルはとても高いのですが、ニュースではあまり報道されない。


シングルセルレベルの免疫プロファイリングは、未知の病原体が侵入した時、人体の免疫反応による新しい抗体を検出する時に威力を発揮します。10xのVDJ解析は、T細胞のTCR遺伝子のcDNAの可変領域をペアで読むことができる。シングルセルで読むから遺伝子のペアの配列を決定できるのです。これについてはまた今度。

2020年3月10日火曜日

Visium 最初の論文とウェビナー(英語)


Maynard et al., Transcriptome-scale spatial gene expression in the human dorsolateral prefrontal cortex(doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.28.969931

Spatial Transcriptomicsの論文は以前にもあったけれど、これが最初のVisiumの論文になるのでしょうか。これは、10xの社員も著者に載っていますが、Visiumでこんなことができる!ということがよーく分かる論文です。

Maynard et al
human dorsolateral prefrontal cortex(DLPFC:背外側前頭前野)のレイヤーは6層に分かれていて外側から内側に向かって、Layer 1、2、・・・6、とそして白質(White Matter)と分類されるそうです。この組織部分を切り出し、Visium実験を行い、各層ごとに遺伝子発現の特徴が見られるか、という実験です。

Maynard et al. Fig.1
Fig1のD、E、Fでは、3つの遺伝子の発現値がマップされています。ここでわかるように遺伝子によっては各層ごとに高発現、低発現の特徴がはっきり分かれているようです。

Maynard et al, Fig.4
各層ごとに特徴的に発現している遺伝子も検出できます。この図では、AQP4遺伝子が Layer 1で高発現(A)、HPCAL1遺伝子はLayer 2で高発現(C)していたことが示されています。
どの場所でどの遺伝子が発現していたのかという研究が、このVisiumの空間的遺伝子発現プラットフォームで可能になるのです!

これ、すごいですよね。今までに無い、次世代RNA-Seq

で、この論文の著者が今度、ウェビナーを行います。残念ながら日本時間では早朝3時半という微妙な時間ですが、朝に強い人はぜひご参加ください。
3月20日 午前3時30分から5時 (この日は休日ですね!)
こちらです






第1回 Visium Day オンラインフォーラム無事終了

今年は桜の開花も例年よりだいぶ早いらしいですね。とはいえ、新型コロナウイルスのせいで多くのイベントが自粛。学会も多くが中止になりました。なんだかとても寂しい3月になりそう。
外出自粛を「お願い」された小・中学生の子供が家に1ヶ月もいる!なんて、信じられない環境の中、私も最近ほとんどテレワークです。(とはいえずっと家にいるわけではありませんけれど)

イベントが自粛となっても私たちはそれに代わる方法を考えないといけないわけで、そうなるとセミナーをウェブでやるのが現実的になります。
最初、秋葉原UDXで行うのを予定していた「Visium Day」も、やっぱりこの時期なのでウェブでやることになりました。

2時間半のセミナーをオンラインでやってみた!

発表は5つ、招待講演の鈴木穣先生の発表を含む(鈴木先生、本当にどうもありがとうございました!)
質疑応答もできるだけできるようにして
間にコーヒーブレイク(という名のトイレ休憩)を設ける
発表するときはカメラをONにして、できるだけライブ感を出す

色々工夫して、途中で聞いている人が退屈しないように企画したのですが、まあ、2時間半はウェブセミナーとしては長いかな。実際そういう意見も多かった。普通の物理的なセミナーだと3時間でも「長すぎる」という人はあまりいないと思う。やっぱりウェブだともう少し短いセミナーが好まれるのか。

最後の私の発表のところで謎の雑音がコンタミしたのはごめんなさい。喋っていた私は気付きませんでした。練習したときは問題なかったのですが。今度は気をつけます。聞き取れなかった人は個別に連絡ください。

当日、私とスクラムの掛谷さんは 柏の特設スタジオから鈴木先生と一緒にお送りしました。
正直な印象:
これが無観客試合か・・・

オーディエンスの表情がわからないのは我々昭和世代には不安でしかない!
ラジオのパーソナリティーもこんな感じなんでしょうかね。でもあまりフランクに喋ったら怒られるだろうしね。

また、このような感じのウェブセミナーは今後もどんどん行う予定です。
お楽しみに!