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2022年3月23日水曜日

シングルセル2022年の新製品

 今日は東京も小雨、時々雪!? 昨日桜の開花宣言があったとは思えない寒さ・・・

先月Xperienceというウェブイベントがあって、今年発売される新製品の数々が発表されました。この様子は何と、日経バイオテクの記事にもなりまして


有料記事なので中身を書くことはできませんが、私たちの製品についてまとめてくださっていますので、著作権に触れない程度でご紹介しますね。

今年リリースするシングルセルの製品は以下の通り
  1. ATACの新しいバージョン、ATAC v2 
    • ピークコールの検出感度が今より高くなった
  2. シングルセル5’ CRISPR
    • シングルセル5’GEXのキットとともに使用できる
    • 今のガイドRNAをそのまま(3’CRISPRの場合はガイドRNAにキャプチャー配列をつけなければいけない)シングルセル実験に用いることができる
    • 細胞表面タンパク質発現やVDJ解析も同時に行うことができる
  3. 固定細胞からのシングルセル発現実験を可能にする、Fixed RNA
    • 細胞を回収した際に4%パラホルムアルデヒドで固定し、細胞をその時の状態で保存する
    • 固定した細胞を、Chromium Xにかける前に透過処理し、デザインされたプローブをハイブリすることによって遺伝子発現を検出する
    • 18,000のヒト遺伝子に対してプローブがデザインされ、発現の検出感度は高い
    • 細胞表面タンパク質発現も同時に解析できる
  4. シングル核実験を容易に行うために最適化された、核抽出キット
    • 凍結組織からおよそ1時間で綺麗な核を抽出するキット
    • 溶液で組織をバラバラにしスピンカラムで遠心、洗浄、など使いやすいキット
  5. Barcode Enabled Antigen Mapping (BEAM)
    • 抗体探索、T細胞スクリーンをシングルセルレベルで大規模に行う製品
    • 今年後半にリリース予定
1から4までは今年の中旬までにリリース予定。
中でも個人的に特に注目しているのは固定細胞からのシングルセル遺伝子発現、Fixed RNAです。やはり、細胞採取から時間が経つと遺伝子発現が変わってしまうケースがあります。そんな場合でもPFA固定してしまえば、実験までの間に発現が変わってしまうことを防ぐことができるかもしれません。
このFixed RNAキットは、Chromium XまたはiXに対応しています。

さてさて、これらの製品ですが、リリースまであともう少し待って下さい。
英語ウェビナーの後、ゴールデンウィークの後に日本語ウェビナー(Fixed RNAと核抽出キット)を行います。
そこで製品説明・ワークフロー・データなどをお見せしますね。

Visiumについても新製品ありますよ。それはまた次に

2022年3月20日日曜日

空間的トランスクリプトミクス まずはこれを読もう

最近暖かくなってきましたね。花粉が飛んでいます。私は数年前から年に数日くらい、花粉がひどい日 には花粉症の症状が出ます。目とくしゃみです。でも今年はもう3日症状が出てる。これから大丈夫かな。

さて、話はガラッと変わりますが、生体システムが正しく機能するためには、その構成要素である細胞の空間的な場所情報が重要です。発生段階において、胚の形態形成は正しい細胞種が正しい場所で分化するように厳密に制御されています。また成体では、組織内の細胞の空間的な構成は、臓器が適切に機能するために極めて重要です。

細胞の種類や細胞機能が空間的にどのように変化しているかは、その場所における遺伝子発現を定量することで測定することができます。また疾患バイオマーカー探索に代表されるように、未知の遺伝子が空間的でどのように発現しているかは、その遺伝子の機能を知る手がかりとなります。

ではどうやって遺伝子発現を解析するか? 一般的にその遺伝子がコードするタンパク質や転写産物を定量化することで行われます。かつては数遺伝子単位で解析するしか方法はありませんでしたが、現在はタンパク質と転写産物のいずれについてもハイスループットな解析手法が存在します。

さて、「空間解析・Spatial Analysis」と言っても様々です。これは実験医学の記事に詳しく説明があります。

実験医学 2021年9月号 Vol.39 No.14 空間トランスクリプトーム

ここでは、空間トランスクリプトームという技術を2つに分けています。組織切片全体を解析対象にする空間網羅タイプと、局所的な部分(Region of Interest:ROI)を解析対象とする局所深読みタイプに分けています。これらのタイプはさらに2つに分かれます。

最初の切片全体を見る空間網羅タイプにはまず、single molecular fluorescent in situ hybridization (smFISH) や、それを連続的に行うMERFISHなど「連続FISH法があります。発現していた遺伝子のRNAに、蛍光プローブを連続的にハイブリダイズさせ、RNAを1分子単位で検出します。

もうひとつが「in situ キャプチャー法。SlideSeqや10x GenomicsのVisiumがこれ。組織切片を特殊なスライドに載せて、発現していた遺伝子をそのままスライド上のキャプチャーオリゴに転送します。

続いて局所深読みタイプのうち物理的に組織を切り出してそこに含まれていた遺伝子・タンパクを解析するのが、20年以上前からメジャーなLaser Capture Microdissection (LCM)などです。最近では直径1ミリメートル以下スポットから、遺伝子やタンパク質の発現を蛍光で検出する光化学的な検出法もあります。Nanostring社のDigital Spatial Profiling(DSP)という手法がこれにあたります。

このように空間トランスクリプトームといっても様々で、どれも長所短所はあります。空間網羅タイプと局所深読みタイプは、そもそもコンセプト・使い方が違うと思いますね。10xは網羅タイプです。つまり局所を選んで深読みするということはそこにヒトの主観が入る・バイアスが入る。これよりも切片全体をできるだけ広く読んだほうがバイアスがかからない解析ができる、という考え方。

10xのVisiumがin situ キャプチャー法であるなら、もう一つの空間網羅タイプの連続FISH法は今年後半にリリース予定のXeniumになります。Xeniumについてはまた今度の機会に特集しますね。

ところで、最近Natureから素晴らしいレビューが出ました。

Moses et al. (2022) Museum of spatial transcriptomics. Nature Methods

このレビューは1987年にさかのぼって空間トランスクリプトームの歴史をひも解いています。1987年から「空間トランスクリプトーム(Spatial Transcriptome)」という言葉があったのは意外ですね。内容はとても濃いのでまとめることは難しいのですが、私も含め、この技術について勉強したい人はまず最初にお勧めします。私のプレゼンの中にこのレビューに書かれている内容がサラッと入ってきたら「ああ、こいつパクったな」と思ってください(冗談。パクりませんよ)。


2021年10月11日月曜日

BRAIN Initiative Cell Census Network—脳の神秘に迫る

 私がバイオ業界に入るきっかけとなった最初の仕事は、ラボテクニシャンでした。そのラボは東京大学大学院医学系研究科 分子神経生物学講座。脳神経の研究をしているラボです。

当時私はグルタミン酸受容体の遺伝子のある場所をノックアウトしたマウスを作るため、ターゲッティングベクターを作ったり、細胞培養したり、シーケンス(キャピラリー)したり、分子生物学のいろいろな実験手法を使っていたわけです。その時の直属のボスとは今でも交流があります。

さて、そんな私ですが脳の研究者ではないので詳しいことはわからないですが、なんだかすごい論文を目にしました。

Volume 598 Issue 7879, 7 October 2021

Brain census

4年前に設立されたBRAIN Initiative Cell Census Network (BICCN)のランドマーク的な成果の報告です。哺乳類の一次運動野のマルチモーダルな細胞センサスとアトラスを作成したそうです。

ここで用いられたのは最先端の分子生物学的ツール。シングルセルトランスクリプトーム、クロマチンアクセシビリティ、DNAメチローム、空間的に分解したトランスクリプトーム、形態学的および電気生理学的特性などの大規模な解析・・・。

このNature特集号には他にも関連論文があります

11本の論文で解析に使用された細胞は、シングルセルまたは核のトランスクリプトームで220万、クロマチン解析に100万以上。
これをするために相当な数の細胞数を準備し、さらに解析のためにトライアンドエラーを繰り返しただろうと想像できます。本当にすごい仕事です。

10xのscRNA-Seqも所々で使われているみたいですね。
脳の神経細胞は大きい(トゲトゲが長い)から流路に詰まってしまうこともあって、その場合は核を流す人も多いです。

このBICCNのウェビナー(October 27 10:00-11:30am Pacific Time)はこちら




2020年3月10日火曜日

Visium 最初の論文とウェビナー(英語)


Maynard et al., Transcriptome-scale spatial gene expression in the human dorsolateral prefrontal cortex(doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.28.969931

Spatial Transcriptomicsの論文は以前にもあったけれど、これが最初のVisiumの論文になるのでしょうか。これは、10xの社員も著者に載っていますが、Visiumでこんなことができる!ということがよーく分かる論文です。

Maynard et al
human dorsolateral prefrontal cortex(DLPFC:背外側前頭前野)のレイヤーは6層に分かれていて外側から内側に向かって、Layer 1、2、・・・6、とそして白質(White Matter)と分類されるそうです。この組織部分を切り出し、Visium実験を行い、各層ごとに遺伝子発現の特徴が見られるか、という実験です。

Maynard et al. Fig.1
Fig1のD、E、Fでは、3つの遺伝子の発現値がマップされています。ここでわかるように遺伝子によっては各層ごとに高発現、低発現の特徴がはっきり分かれているようです。

Maynard et al, Fig.4
各層ごとに特徴的に発現している遺伝子も検出できます。この図では、AQP4遺伝子が Layer 1で高発現(A)、HPCAL1遺伝子はLayer 2で高発現(C)していたことが示されています。
どの場所でどの遺伝子が発現していたのかという研究が、このVisiumの空間的遺伝子発現プラットフォームで可能になるのです!

これ、すごいですよね。今までに無い、次世代RNA-Seq

で、この論文の著者が今度、ウェビナーを行います。残念ながら日本時間では早朝3時半という微妙な時間ですが、朝に強い人はぜひご参加ください。
3月20日 午前3時30分から5時 (この日は休日ですね!)
こちらです






2019年7月17日水曜日

シングルセルとナノポアシーケンスの組み合わせ

先日、秋葉原での10xユーザーグループミーティング、100名以上の方々にお越しいただきました。次回は大阪、千里中央にて、10月8日(火)に予定しています。
詳細はまた、いろんなメディアからお知らせがあると思いますのでお楽しみに。

さて、その秋葉原のユーザーミーティングでもお話し頂いた、Garvan Institute のAlex Swarbrick先生らのグループが、Nature Commuinicationsに、とても面白いシングルセルの論文を発表したのでお知らせします。

Singh et al., (2019) High-throughput targeted long-read single cell sequencing reveals the clonal and transcriptional landscape of lymphocytes. Nature Communications v10, 3120.

この論文では、患者自身の免疫系の中から、癌細胞に対して反応性のあるとてもレアな免疫細胞を発見する新しい方法について書かれています。
Repertoire and Gene Expression by Sequencing RAGE-Seqと呼ばれるこの方法では、免疫細胞が腫瘍組織の内部でどのように進化するのかを解析でき、癌を標的とする免疫システムを明らかにすることができると言われています。

技術的には4つの異なるゲノムプラットフォーム(Oxford Nanopore Technologies、10x Genomics、Illumina、CaptureSeq)を組み合わせています。

彼らはまず、免疫細胞受容体をコードするRNAを標的にして、シングルセルからRNAを濃縮する方法を開発、そして免疫細胞レセプターの全長配列を正確に読むための計算ツールを開発しました。

結果として免疫レパトア配列、シーケンスによる遺伝子発現(RAGE-seq)を得ます。一度に何千もの免疫細胞受容体を「スキャン」することによって、組織サンプル中の免疫細胞がどのように関連しているか、そしてどの免疫細胞が癌に対して高い反応を示すのか、といったスナップショットを正確に見ることができる、そうです。
(以上、こちらの記事を参照)



しかし、10xとロングリードがここで融合するとは、時代を感じますねえ(私だけ?)。



2019年3月30日土曜日

新情報アップデート 10x Genomics

ブログの更新は随分とご無沙汰していました。2019年が始まり、アメリカ企業なのでQ1(1月〜3月)が始まり、日本ではこの時期は年度末。会社として新しい計画が動き出すと共に日本のアカデミアでは締めの季節。

もうすぐ新年度も迎えるタイミングですので、この際新情報をアップデートします


2月のAGBTでも発表されましたが、10xでは今年、3つのアップデートがあります。
ひとつめは「免疫プロファイリングデータベースの公開」
20万ものT細胞をターゲットにして、細胞表面タンパク質の発現、抗原タンパクの特異性、5’側の遺伝子発現、VDJ領域の完全長配列、という種類の情報を一度に、同一細胞から得たデータです。こんな大規模な解析は今までなかったと思います。
これがまもなく公開されます。このようなマルチオミクス解析が、Chromiumを使えば誰でもできるようになったのは、NGSが登場した時の衝撃に似ていると思いません?

二つめは「Spatial Transcriptomics」
これは前回も紹介しましたね。無数のウェルが仕込まれたスライドガラス上に、サンプルの切片を固定し、ウェルの中にあるバーコード付きのオリゴでサンプルのmRNAをキャプチャー、その後NGSで読みます。バーコードは各ウェルの位置情報と対応しているので、後でRNAの発現値と位置情報を結びつけて解析することができる、そんな技術です。
組織のどこに、どんな遺伝子が発現していたのかがわかるわけです。
これももう少ししたら具体的に、アナウンスされる予定です

三つ目は「Chromium Connect」
簡単にいうとオートメーションシステムです。Chromiumが内蔵されたサンプル自動化装置で、細胞混濁液を用意しさえすればあとはエマルジョン化からそのあとのcDNA作製〜NGSライブラリ作製まで自動で行ってくれる装置です。
夕方細胞が用意できた、っていう時もこの装置が夜中働いてくれるので、作業効率を大幅にUPできると思います!

と、ここまでのことでもっと詳細を知りたい方は、こちらから、登録してみてください。
10xから情報アップデートがあったらメールでお知らせが行くようになっています。
登録後にはこれらの説明ビデオも視聴できますよ。ぜひどうぞ!




2019年1月31日木曜日

Spatial Transcriptomics てどんな技術?

https://spatialtranscriptomics.com/
昨年末、10x Genomicsの仲間になったSpatial Transcriptomics
スウェーデンのこの会社、遺伝子の発現量を組織の場所情報と共に得ることで、組織のどの場所でどんな遺伝子が多く発現していたのかを、見ることができるすごい技術を持っているのです。

in situ hybridization ってご存知でしょうか? 私は昔、脳神経化学のラボで実験テクニシャンをやっていたことがあるのですが、その時初めてマウスの脳の切片をin situ hybridization をやったデータを見ました。この技術は遺伝子(メッセンジャーRNA)に対応するプローブを使って、組織切片のどの場所に目的遺伝子が発現していたのかを見ていたわけですが、NGSが出てくるずっと前の当時は最先端の技術でした。その頃マイクロアレイが登場し始めました。

もしin situ hybridization があらかじめ絞り込んだ遺伝子の発現を見る技術だとしたら、Spatial Transcriptomicsの技術は遺伝子を絞り込まずにRNA-Seqを使って網羅的に遺伝子の発現を見ることができます。

ワークフローはWebsiteに説明があります。
イメージとしてはスライドガラスに小さな(直径100μm)ウェルがたくさんあって、そこに切片を固定します。ウェルの底にはウェルごとのバーコード配列がついたキャプチャーオリゴがあって、組織のmRNAはオリゴにくっつきます。
その後cDNA作製からのNGSライブラリ作製へ進み、NGSで読む。読んだ後にデータ解析して、どのウェルバーコード(組織の場所を示す)のどの遺伝子がどれくらい発現していたのか、がわかるわけです。

https://spatialtranscriptomics.com/workflow/

この技術とシングルセルでの応用について、Scienceに「WEBINAR | Mining the transcriptome using spatial transcriptomics: Comprehensive 2D or 3D visualization of all mRNAs in tissue sections」があります。
昨年の6月6日に行われたウェビナーです。超おすすめですよ!

ここから登録するとウェビナーが視聴できます。




今(2019年1月)、Spatial Transcriptomicsは10xの一部です。

このSpace情報とOMICSを繋げて、Spatialomics「スペーシャロミクス」っていうそうです。これから流行るかな?

2019年1月28日月曜日

Linked Readでメタゲノムアセンブリの話

先週は暖かい国にて会社のミーティングでした。野生のイグアナに初めて遭遇。


帰ってきて日本の寒さがこたえます〜。


さて、メタゲノムの分野では、培養できない細菌のゲノムを決めるのが、ひとつのテーマとしてあるそうです。昨年からLinked Readを使って複数のゲノムを同時に決めるというのがちょっとしたブームになっていたのですが、今回、そのお話のウェビナーがありますので紹介します。


うーーん、日本時間は深夜2時か、、、
その時間での参加をお願いはいたしません。私もおそらく無理。多分録画されるはずなのでレジストする価値はありますよ。
こちらから、Webinar Registrationをクリックしてくださいね!

最近はほとんどシングルセルの話しかしてませんので、たまにはLinked Readも良いのではないでしょうか。
ちなみにメタゲノムアセンブリにはSupernovaは使えません。別のThird Partyツールを使います。


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2019年1月27日日曜日

TotalSeq 細胞表面タンパクと細胞内遺伝子発現を同時計測(2)

BioLegend社のTotalSeqのベージ
前回、Total-Seqの新製品が出たとお伝えしました。
今までのがTotalSeq A、新製品はTotalSeq B、TotalSeq Cです。

AとBとCとで何が違うの?というと、対応する10x Genomicsのキットの種類が異なります。

  • A: 3'-Expression Ver.2 キット用(Ver.3 キットでも使用は可能)
  • B: 3'-Expression Ver.3 キット用(Ver.2 キットでは使用できない)
  • C: 5'-Expression (5’キット専用)
抗体についているキャプチャーオリゴ配列が、それぞれ10xのキットのキャプチャー配列に合わせて設計されているのです。

他の違いは、
  • BとCは、10x Genomicsがプロトコルと解析用のソフトウェアをサポートしている(Aはサポート対象外)
  • BとCは、2019年1月現在、製品ラインナップがAより少ない

ヨーロッパのベータ版ユーザの話によると、BとCはとても良いとのことです。(これ聞いて正直安心しました〜)
日本でもリリースされたことだし、年度末にかけて、どうですか?(笑)


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2019年1月26日土曜日

Total-Seq 細胞表面タンパクと細胞内遺伝子発現を同時計測(1)

皆さんCITE-Seqってご存じですか?
Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by sequencing
のことで、ざっくり言うと、
RNA-Seqと細胞表面タンパクの発現を同時に、シングルセルレベルで解析する技術
です。

CITE-Seqというそのままの名前のウェブサイトもありますね。
詳しく知りたい方はこちらの2つの論文が詳しいのでお勧めです。

Multiplexed quantification of proteins and transcripts in single cells
Peterson et al. Nature Biotechnology volume 35, pages 936-939 (2017)
doi:10.1038/nbt.3973

Large-scale simultaneous measurement of epitopes and transcriptomes in single cells
-> Simultaneous epitope and transcriptome measurement in single cells
Stoeckius et al. Nature Methods volume 14, pages 865-868 (2017)
doi:10.1038/nmeth.4380


細胞の表面タンパクを調べるならフローサイトメーターという便利な機械があるじゃないか、と思われるかたも多いと思います。フローサイトは、細胞マーカータンパクに対応する抗体を用いて細胞を染色し(その抗体には蛍光がついています)、レーザーで蛍光を光らせて、どんな抗体があったのかを測ります。
免疫細胞には色々な種類の細胞があり、それぞれ特徴的に発現している遺伝子があります。細胞特異的に発現している遺伝子=タンパク質が、細胞表面に現れるところを抗体を使って測っています。
ということは、対応する抗原=細胞表面タンパク=細胞マーカーを測るということになるので、間接的にどんな種類の細胞がサンプルに含まれていたのか、がわかるのです。

CITE-Seqも抗体を使って細胞を区別します。その上さらに、mRNAの情報もシングルセル単位で取ってくることができます。ではmRNAの情報を取る理由は何でしょう?

まあこれがシングルセル発現実験が行われる理由でもあるのですが、抗体を使った細胞分類方法は、

  1. 既知の高発現タンパクの抗体を使っている
  2. 一度に分類できる抗体の数は蛍光とレーザー波長とに依存する→たくさんの抗体を一度に分類しようとすると高価な装置が必要
  3. 未知の細胞の分類には対応できない(どんなタンパクが高発現しているかわからない細胞は分類できない)

という特徴があります

これを教師あり分類、と呼ぶならば、遺伝子発現情報を使って細胞種を分類する方法を教師なし分類と呼べるでしょう。遺伝子発現の情報(mRNAのカウント)を使えば未知の細胞群を見つけることだって可能です。

CITE-Seqは、これまでの抗体免疫染色で細胞分類を行なっていた方法と、シングルセルNGS発現解析を組み合わせたところが画期的です。抗体は使いますが、その抗体を測るときに蛍光を使いません。抗体にはその抗体特異的なオリゴ配列がついていて、そのオリゴ配列をNGSで読むことで抗体を認識するのです。

細胞単位で、

  1. どの抗体が細胞表面にあったのか、がNGSでわかる
  2. どんなmRNAが細胞内にあったのか、がNGSでわかる
  3. これらのデータは同じシングルセル由来だったのか違うシングルセル由来だったのか、バーコード配列で区別できる
  4. 分類に使う抗体の種類の上限は(理論的には)アンリミテッド
10xのChromiumはもちろんこのCITE–Seqに対応しています。昨年の春にBioLegend社がTotal-Seqという名前で製品化しました。もうすぐ1年経ちますね。そして最近新製品が出ました!



2019年1月6日日曜日

10x Genomicsの受託解析会社のまとめ(国内)

明けましておめでとうございます。
私は昨年の7月に今の会社に転職して、色々と慌ただしく過ぎていった半年間でしたが、今年はもっと(良い意味で)慌ただしくなるような予感がします。

昨年展示会ブースでお話しした中で、一番多かった質問は「どこかで受託解析しているところありますか?」というものでした。ですので本年最初の記事は受託会社のまとめ、にします。

これから紹介する会社さんは、10x Genomics社がオフィシャルにオススメしている会社、という訳ではありません。各社のウェブサイトや学会展示会にて、シングルセル解析またはLinked-Read解析をサービスとして紹介していた会社に私がコンタクトをとり、実際に話して得た(または前から知っていた)情報です。
と言っても、細かいサービス内容や価格は各社公にして欲しく無いと思いますので詳細はここでは書きません。価格やメニューなどはそれぞれコンタクトして聞いてくださいね。

以下、

  • 自社でChromiumとNGSシークエンサーを揃えて、サービスを展開している会社
  • データ解析受託を中心にサービスを揃えている会社

の順で紹介します。
その中での並びは単純に50音順、です。

実験からシークエンスまで自社で受託している会社


次にあげる2社は、ChromiumもNGSシークエンサーも自社で揃えています。学会展示会などでブースを見かけることも多いのではないでしょうか。NGSは塩基単位でのコストは下がっているとはいえ、それでも1回のランニングコストは結構しますので、シークエンスも外注の選択肢になるでしょう。

日本ジーンウィズ株式会社

RNAシーケンシングのメニューの中にシングルセル発現解析の紹介があります。右側のリンクをクリックするとPDFのチラシがダウンロードできるようです。発現解析以外にも、シングルセルのアプリケーションは色々と揃えていくようです。

タカラバイオ株式会社

ハプロタイプフェージング解析は、ヒトゲノムの構造解析のひとつで、ChromiumのLinked Readを使って行なっています。ウェブサイト上では、シングルセルではなくLinked-Readの受託実験解析しか見つけられませんでした。



上記の2社はChromiumを持っていて、NGSも自社でシークエンスできる会社です。お客さんがChromiumシステムを持っている場合、シングルセル用のNGSライブラリまでを自分で作成し、そのあとのNGSシークエンスを受託会社に外注する、ということもあり得るでしょう。10xのライブラリは少し特殊なので、ジーンウィズさんやタカラバイオさんのように自社でChromiumを持っているところにお願いする方が安心でしょうね。


ちなみに、NGS一般で言うと、実験は海外に外注し解析だけ国内で行う会社はあります。実験と解析全て海外外注で国内では窓口だけを請け負う会社もあります。正しいデータがちゃんと取れればどこで読んでも同じだと思いますが、気にされる方は最初に聞いておいた方が良いでしょう。
シングルセル解析はまだあまりメジャーではないのか、またはサンプル輸送の面で制限があるのか、海外のシングルセル実験受託の広告は見たことがありません(私が見たことが無いだけかもしれませんが)。

では、10x Genomicsのデータ解析をサービスとして行なっている会社にはどこがあるでしょうか?

データ解析を中心にサービスを提供している会社


まず初めに、この種のサービスは価格が付けにくいという性格があります。私も実は前々職で同じようなことをしていましたが、データ解析というのは実に千差万別で、お客さんのニーズが同じだったことはありません。しかし価格が無いと売れないわけで、ワークフローを一応作って価格を付けて売ったあと、無料オプション解析ということもありました。あるいは色々なオプションを付けてパッケージにして販売したことも。

なので一見、価格が高いと思うサービスがあったとしても、そのサービスがどこまでカバーしているのか(再解析の有無や、結果打ち合わせの回数、トレーニングの有無など)を聞いてみた方が良いと思います。

では、まずは自社のウェブサイトにシングルセル解析の記載がある会社から。

アメリエフ株式会社

トップページにシングルセル解析が紹介されています

シングルセル解析の専用ページもありました。

アメリエフさんではシングルセル初心者の方でも解析のイロハを取得できるように、トレーニングメニューも充実しているとのこと。解析ツールの開発も行なっています。

株式会社ジエンブル

福岡の会社で、NGS解析に特化した会社です。実験のコンサルティングから相談に乗ってくれるそうです。サービスのページはこちら。2月末までの注文に限りシングルセルRNA-Seqの解析キャンペーンをやっているみたいです(PDFチラシはこちらから


次に紹介する会社は、ウェブサイトでは「10xのデータ解析をしています」とはっきり書かれていないけれど実際はNGSデータ解析サービスの中に含まれていて、実績もあるところ。
もしウェブサイトに書かれていたらすみません。私がみつけられなかっただけです。
教えて頂けたら訂正します。

アクシオヘリックス株式会社

NGS現場の会のメーリスでも良く登場しますね。PictBioというのは受託解析サービスのことだそうです。シングルセル発現解析はNGS解析の一部に組み込まれています


株式会社ダイナコム

ここはSNPAlyzeなどのソフトウェアの販売で知っている方もいると思いますが、バイオインフォマティクスのサービスも充実しています。ウェブサイトには載っていませんが、Cell Ranger(10xが提供しているシングルセル解析のツール)を流すだけの単純解析も可能、その後のシングルセル系のインフォ解析も充実しているそうです。


その他

解析環境を提供している会社

データ解析は高スペックのサーバーが必要です。NGSデータを扱うわけですからね。
これはクラスターでは無い場合の、Cell Rangerの最低必要スペックです。
詳しくはこちら

シングルセル発現解析では、1セルあたり2万5000本〜5万本のリードが必要十分とされています。仮に1サンプルで1万セルを解析するとして、サンプルあたり2億5000万本〜5億本のリードが必要。HiSeq2000でも数レーンは必要でしょう。
NovaSeq6000のS1フローセルを使えば4サンプル程度は流せる計算になるでしょうか。いずれにしても相当数のリードをカウント、マッピングしないといけません。

株式会社ジーンベイ

シングルセル解析ではありませんが、Linked-Readを使ったデノボアセンブリは実績があるそうです。
面白いところでは解析パイプライン環境をクラウドに構築し、お客さんはそこで解析できるようにするというサービスです。シーケンスデータ解析クラウド、そのままわかりやすい名前ですね。
これはあくまで計算環境をクラウドで提供するというビジネスなので、お客さんはある程度データの解釈ができることが前提、のように思います。シングルセル用の環境はまだ(2018年12月現在)準備されていませんが、需要があれば載せることも検討とのことです。

株式会社 ナベ インターナショナル

計算環境を自前で用意したいというお客さん向けです。NGS解析専用サーバを組み立てて販売するビジネスモデルです。こちら
Takeruという名前はご存知の方も多いのではないでしょうか? 学会展示会でよくサーバーを展示しているところを見かけます。シングルセル発現解析専用サーバーの販売実績もあるそうです。
結果の解釈はお客さんにお任せしています。コマンドラインをガンガン使える玄人向けサービスと言えるでしょう。



いかがだったでしょうか。上記にあげた会社はどこも、10xのデータ解析をビジネスとして行なったことのある会社です。
最初に書いた通り、10x Genomics社がオフィシャルにお勧めしているわけではありません。私が個人的に聞いて集めた情報になります。なのでもしかしたら「うちでも10xデータ解析やってますよ」という会社があるかもしれませんね。追加していく方針です。

あと、今は10xデータ解析は経験無いけれど、多分絶対できるはず!という会社もいくつかありますので、そこはキャッチしていきますね。


では、2019年がみなさんにとって更なる飛躍の年になりますように!

2018年12月7日金曜日

10x Genomics, Natureウェビナーのお知らせです

来週は免疫学会@福岡です。私もこの学会は初めて参加するんですが、今回はスクラムさんの隣に10xのブースを出します。私の前職のトミーデジタルさんで、私の部署の隣部署がバイオレジェンドという会社の抗体を扱っていたので、免疫分野も興味はありました。
でも、はい、新参者です。

さて、来週の14日、日本時間では深夜2時ですが、Natureウェビナーで10xの新製品色々の話があります。

ええ、深夜2時ですのでこの時間参加できる人は少ないと思います。でも、登録しておけばオンタイムに参加できなくても後でビデオのリンクが送られて来る予定です。
10xの最新アプリケーションに興味がある方は是非登録しましょう!

Accelerating Biology: New Product Innovations from 10x Genomics  

スピーカーは、10x Genomics が誇る優秀なサイエンティストのサラ。
本ウェビナーのトピックは、

  • ゲノムのヘテロ性を高精度で検出できるシングルセルCNV
  • 今までの試薬と比べて遺伝子検出力が最大2倍にUpしたシングルセル発現解析Ver.3
  • 細胞表面タンパク発現と遺伝子発言が同時に検出できるFeature Barcording
  • ゲノム上のオープンクロマチン領域だけ読むことができるATAC-Seqのシングルセル解析

どれも今年リリースした新アプリケーションです。
(注意:遺伝子検出力がUPしたシングルセル発現解析は、3’側の発現解析の方です。)


ちょっと今回は深夜という辛い時間帯でしたね。
でも来年は日本時間の丁度いい時間帯に、日本語でのウェビナーをやってみようと考えています。(ここで宣言すればやらざるを得ない)

というわけで、今年ももうあと3週間ほどで終わりますが、まだまだ話題は尽きない10xです。
お楽しみに!

2018年11月30日金曜日

広いところへ引っ越しました 

と言っても私が広いお家へ引っ越した訳ではありませんよ(広い家より天井が高い家が欲しい…)。10x Genomicsのオフィスが引っ越したニュースです。

ニュース本文はこちら
SanFrancisco Business Reviewのこの記事によれば、カリフォルニアのプレザントンにある本社の新しいオフィスは15万フィートスクエアもあるそうです。

ん?

日本人にはいまいちフィートってよくわからないですよね。だいたい1万4000平方メートル。または4235坪。結構広いですよねえ。
日本で一番広いカシマサッカースタジアムのピッチのサイズは
ゴールラインの長さ:78m
タッチラインの長さ:115m 
面積:8,970平方メートル 
だそうで(ここ)、新社屋の広さはサッカーピッチの 1.5倍以上あるんですね。

それはそうと、10xはカリフォルニアのベイエリアで最も成長している会社の1です。
2015年の収入は332万ドル、これが2017年には7,118万ドル。3年で20倍! 
この記事によればここ数ヶ月で新たに200人社員を増やしたという。この中には私も含まれるんだろうな。


さてさて、この間のウェビナーは3’遺伝子発現キットのバージョン3の話でした。バージョン3のキットでは、少ないリード数で検出できる遺伝子数が多くなったので、シークエンスにかかるコストを下げることができます。
バージョン3の遺伝子発現キットは、単に遺伝子発現のみを測るのではなく、他のFeature Barcodingキットと組み合わせることで、細胞表面タンパクの発現など、メッセンジャー以外の情報も同時に検出することが可能なんです!
これは近いうちに必ずこのブログで詳しく書きたい。ソフトウェアのデモも合わせて。

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