2019年11月16日土曜日

Visium Spatial Transcriptomicsのウェビナー 日本語

なんか前の投稿を見たらこれもウェビナーの告知だったなー。同じネタですみません。NGS現場の会、シングルセルゲノミクス研究会、のメーリスでも流れましたが、11月19日(火)の午後2時からVisium Spatial Transcriptomicsの日本語ウェビナーを行います登録サイトはこちらから
登録サイトはこちらから

で、そもそもVisium って何? ってかたがいると思いますが、これは in situ hybridization とRNA-Seqの両方を合体させたようなイメージです。

  1. 組織の凍結切片を用意する(組織により異なるがおよそ10μmの厚さ)
  2. 切片を特殊なスライドガラスの上に載せる
  3. H&E染色する
  4. Permebilization処理をして組織に穴を空け、mRNAをガラスの上に落とす
  5. ガラス上に敷き詰められているオリゴのポリdT配列でmRNAを捉える
  6. ガラス上でmRNAを逆転写し、cDNAを作る
  7. cDNAを回収、増幅し、NGSライブラリを作る
  8. NGSシーケンスをする
  9. データ解析
ここで肝となるのはガラス上のキャプチャーオリゴ。これにはガラス上に(キャプチャーエリアという1辺6.5mmの正方形の中に)敷き詰められている約5000のスポットには、それぞれ住所IDが付いていて、そのIDごとに異なるバーコード配列がオリゴに含まれている。
cDNAを作る時に同時にそのバーコード配列も取り込まれ、NGSで読まれます。
  1. 遺伝子(mRNA、cDNA)の部分的な配列(3’側)、と
  2. スポットごとに異なるIDのバーコード配列
の両方を同時に取得します。(ペアエンドで読むので)
1で遺伝子の発現がわかり、2でその遺伝子がどのスポットから得られたのか、がわかる
つまり、どの遺伝子がどのくらい、組織のどこで発現していたのか、が同時にわかる。


カタログはこちらから落とせます

で、そのウェビナーが火曜にあるんですね。
日本語でやるので多くの人に聞いてもらいたい。時間の都合がつかない方はレジストだけでもしてもらえれば後でビデオなり資料なりのお知らせが行くと思います。
まさに、次世代の発現解析、ですよ。そしてこれは来年、もっともっとメジャーになることは間違いありません。

ちなみに、これのソフトウェアについてのウェビナーも21日の12時から(これは英語ですが)行われます。こっちはまず19日のウェビナーの内容を知っているのが前提で進められますので、両方の参加をオススメします。



2019年10月22日火曜日

Visiumのウェビナー:技術紹介とデータ解析について(英語)

ご無沙汰しました。本当にご無沙汰です。本業が忙しくてこちらの方はおろそかになっていたことをお詫びします。
前回の投稿から早2ヶ月、その間国内のイベントでは
  • シングルセルゲノミクス研究会
  • がん学会
  • 大阪ユーザーグループミーティング
あとVisium Spatial Gene Expression のセミナーやウェビナー、などを主に行っていました。その間、日本語のウェブサイトも完成し、資料なども少しずつ日本語化を実現。もちろんこういうことはチームワークが大事です。10xの社風、というか良いところは、チームワークがバランス良く取れているということでしょうか。みんながみんな、持てる力をフルに生かせる職場って、理想ですよね(バーチャルオフィスですが)。

ついでに言うと、その間台湾と韓国でもいくつか大きな学会があり、ソウルでも先週ユーザーミーティングをやっていました。

Visiumは間違いなく、今年下半期(つまり今)から来年いっぱいにかけて、注目されると思います。あちこちでセミナーしてもみんな興味を示してくれる。
そこで、今月から来月にかけて、日本時間の正午からウェビナーを2つ行います。

ちなみにこのウェビナーはどちらも英語です。でももし日本語でやって欲しいという要望が多ければ、日本語でも予定しますので視聴後に表示されるアンケートのところにそう書いてください。


まず最初は、10月29日のお昼から行われる、Visiumの製品紹介と技術、プロトコルについてのウェビナー Getting Started with the Visium Spatial Gene Expression Solution
登録はこちらから

2回目は、11月21日に行われる、Visiumのデータ解析、ソフトウェアについてのウェビナー Exploring New Frontiers - Analyzing and Visualizing Visium Gene Expression Data
登録はこちらから

どちらも時間は12時からです。お昼休みに英語のウェビナーをぜひどうぞ。
あとで録画も見れますので登録だけでも忘れないうちにしてみてください。

では


2019年8月6日火曜日

シングルセルATAC-Seqの論文

毎日暑い日が続いていますね。冷房無しでは生きていけない、暑さに弱い私です。
先日、近所で花火大会があったので見に行きました。打ち上げ花火の開いた形って、なんと無く、細胞に似てません? 核と細胞質、ほら

さてさて、シングルセルのATAC-Seqといえば、ゲノムのオープンクロマチン領域を狙ってライブラリを作りシークエンスして、遺伝子の制御領域をシングルセル単位で明らかにするという技術ですよね。

そのATAC-Seqを使ったユーザーからの論文がNatureにPublishされました!
Howard et al.のシングルセルATAC論文

この論文は、シングルセルATACのランドマーク的なものかもしれません。
シングルセルATACを10xのシステムで解析する方法とアドバンテージが、これを読めばだいたいわかる。私たちのプレゼンよりも、実際のユーザーのレポートの方が説得力ありますよね。
ひとつ、すごいな、というか私が気付いていなかっただけかもしれませんが、ATACのデータからCNV(コピー数変異)を推定することも可能かもしれないですね。
確かに、ATACはゲノムを見ているわけだし、遺伝子のコピー数はオープン領域のコピー数と関係ありますよね。

Howard et al., (2019) Massively parallel single-cell chromatin landscapes of human immune cell development and intratumoral T cell exhaustion. Nat. Biotech. 37, 925.

リンクはこちら

あともうひとつ、まだBioRxvですが、
こちらの論文も注目しています。ATACとCITE-Seqを組み合わせています。

シングルセルATACはまだ、発現に比べるとメジャーではありませんがそのぶん論文になりやすい!ということもあると思うので、ぜひATACってみませんか?


2019年7月26日金曜日

上級者向けシングルセルデータ解析ウェビナー2つ SeuratとATAC

シングルセルのデータ解析をやっている方へ、オススメのウェビナー(録画)があります! ちょっと前にアメリカ時間で行われたのですが、録画がオープンになりました。

ひとつめはこれ
ATAC-Seqのデータ解析とビジュアライゼーションの話です。
ここから視聴できます。
写真の左上のMikeは先月の東京ユーザーミーティングにも来ましたね。右下のHankはアルゴリズム開発のエキスパートです。

もうひとつは、これ

こちらから視聴できます。
Seuratを開発しているNYU Center for Genomics and Systems BiologyのDr. Rahul Satija が、Seurat v3を使って様々なタイプのシングルセルデータを解析する方法を説明したウェビナーです。最初ちょっと早口かもしれません。ですがSeuratを少し使っている・これからやろうと思っている研究者にはオススメです。

ぜひどうぞ。




2019年7月18日木曜日

シングルセルDNAのウェビナー

4月から毎月ウェビナーをしています。英語、日本語、中国語、と3パターンあって私は日本語担当なんですね、もちろん。

さて、次の日本語のウェビナーは8月1日(木)の午後2時から。テーマはシングルセルDNAです。


コピー数変異をシングルセルで読む技術をご紹介します。
ぜひ登録の上、ご参加ください。録画するので当日参加できないひとも登録だけどうぞ。


因みに英語は7月30日、こちらから

ウェビナーって思った以上に結構大変なんです。
まず英語で作られたプレゼンを日本語にしないといけない。その時、英語の方がしっくり来る単語はそのまま英語で行こうかどうか悩みます。

そして日本語にしたとしても、それが聞き言葉として正確に伝わるかどうか、が問題。漢字を見れば明らかだけど聞いただけでは意味を間違えてしまう日本語って、結構あると思います。
例えば「陽性」と言うのを聞くと、私は「妖精」と間違えてしまうんです。(なんてロマンチックな!)これは冗談ですが、プレゼンは英語で書かれているのでそのまま「ポジティブ」と言った方が伝わりやすいかも、とか考えてしまいます。

次に読み方とパワポのスピード。自分で作った原稿を読むわけですが、読んでいないように見せかけないとダメで、しかもパソコンに向かっているわけです。 相手の顔が見えないからどうしても事務的になってしまったり、つまずいてしまったり。前回の免疫プロファイリングは途中噛んでしまい、緊張してしまいました。もっと練習しろ!ということですが。
録画バージョンはちゃんとリラックスした状態で撮り直していますので、聞きやすいと思います。

今度のDNAウェビナーは、前よりもリラックスして行いたい

2019年7月17日水曜日

シングルセルとナノポアシーケンスの組み合わせ

先日、秋葉原での10xユーザーグループミーティング、100名以上の方々にお越しいただきました。次回は大阪、千里中央にて、10月8日(火)に予定しています。
詳細はまた、いろんなメディアからお知らせがあると思いますのでお楽しみに。

さて、その秋葉原のユーザーミーティングでもお話し頂いた、Garvan Institute のAlex Swarbrick先生らのグループが、Nature Commuinicationsに、とても面白いシングルセルの論文を発表したのでお知らせします。

Singh et al., (2019) High-throughput targeted long-read single cell sequencing reveals the clonal and transcriptional landscape of lymphocytes. Nature Communications v10, 3120.

この論文では、患者自身の免疫系の中から、癌細胞に対して反応性のあるとてもレアな免疫細胞を発見する新しい方法について書かれています。
Repertoire and Gene Expression by Sequencing RAGE-Seqと呼ばれるこの方法では、免疫細胞が腫瘍組織の内部でどのように進化するのかを解析でき、癌を標的とする免疫システムを明らかにすることができると言われています。

技術的には4つの異なるゲノムプラットフォーム(Oxford Nanopore Technologies、10x Genomics、Illumina、CaptureSeq)を組み合わせています。

彼らはまず、免疫細胞受容体をコードするRNAを標的にして、シングルセルからRNAを濃縮する方法を開発、そして免疫細胞レセプターの全長配列を正確に読むための計算ツールを開発しました。

結果として免疫レパトア配列、シーケンスによる遺伝子発現(RAGE-seq)を得ます。一度に何千もの免疫細胞受容体を「スキャン」することによって、組織サンプル中の免疫細胞がどのように関連しているか、そしてどの免疫細胞が癌に対して高い反応を示すのか、といったスナップショットを正確に見ることができる、そうです。
(以上、こちらの記事を参照)



しかし、10xとロングリードがここで融合するとは、時代を感じますねえ(私だけ?)。



2019年7月11日木曜日

シングルセルゲノミクス研究会 発足!

新しい学会・研究会のお知らせです!


NGS現場の会に行ったことがある方はわかると思いますが、初心者からプロまで一堂に集まり、学会や研究テーマの枠を超えて、最新技術の使い方や使ってみた感想などを、普通の発表に加えてざっくばらんに話し合う、そういう雰囲気の場はいいですよね。
最新技術と言えば、今は、シングルセル解析! 
というのは過言ですけど、その現場の会の雰囲気が再び帰ってきました。

その名も「シングルセルゲノミクス研究会」略してSCG

ウェブサイトはここ
京都大学の渡辺先生が中心となりこのような会が出来上がりました。
第1回の集まりは8月29日(木)〜30日(金)の2日間。場所は柏の葉カンファレンスセンター。

この場所はつくばエキスプレスに乗って柏の葉キャンパスで降りると、そこから徒歩で1、2分です。三井ガーデンホテルと同じ建物にあります。

現場の会と同じように、基本はみんなフラットな関係で、アカデミアもコマーシャルも、初心者もエキスパートも、分け隔てなくディスカッションができる場になると思います。

スポンサー企業の方々もその辺は理解して出展するでしょう。私たち10xはランチョンを行います。今から楽しみ!

プログラムは、こちらに随時アップされていくようです。
特別講演、招待講演はこの道の達人が勢揃いですね。

ポスター発表、口頭発表は募集制です。既に多くの人が発表を希望しているそうです。

参加登録はこちら

参加費は、発表するかたは無料(ただし上限枠があると思うので希望者は早めに登録する方が良いと思います)
発表無しでもそこそこ安い価格ではないでしょうかね? ほかの学会と比べて。

ここに来ればシングルセルの全てがわかる!というキャッチフレーズがあるように、このような会は貴重だと思います。特に新しいテクノロジーが普及する過程において。

私もランチョンスポンサーという形で参加しますが同時にたくさん勉強させて頂こうと思います。
なので、皆さんも、

  • 自分の研究にシングルセルが本当に適しているのか正直わからない
  • これからやろうとしている手法が王道なのか邪道なのかはっきりさせたい
  • そもそもシングルセルで何がわかるのか知りたい

そんな疑問を持っているならぜひ参加するべきだと思います。
せっかくたくさんのエキスパートの先生方もいることだし、またいろんなシングルセル関連の企業も来ているので、きっとどこかで解決、または解決に至るヒントが得られると思います。
(私も正直、疑問を抱えていまして、それをある人に聞きたい)

来月ですので早めに登録することをオススメします。
あと、地方から参加される方は、ホテルは柏の葉キャンパス近辺か、つくばエクスプレスの都心側の駅に取った方が良いと思います(つくば側だと朝夕のラッシュに巻き込まれる。都心側なら逆方向だから空いている)。


P.S. 29日の夜にはネットワーキングがあるので、そこで軽く飲みながら研究のことを話すのもいいでしょうね。

2019年6月4日火曜日

10x Genomics ユーザーグループミーティング in 秋葉原 2019

今日は前から何回か宣伝して来た、10x Genomics ユーザーグループミーティング(東京)のお知らせです!


これ、昨年は10月に行いました。今年は早くも6月28日に東京で行います。
今年は、午前中はサンプル調整・データ解析ワークショップ、午後はお客様の発表、というようにしました。
午前中のワークショップは、基本プレゼンベースです。10xのユーザーを想定しています。10xの前提知識が無いと聞いていてもわからないだろう、と思うからです。

午後のセッションは一般の方(シングルセルに興味のある方)を対象にした、いわゆるユーザーミーティングです。もちろんユーザー以外の方でもウェルカムです。みなさんどんな研究に10xのChromiumを使っているか、興味ありますよね。

-------------------【ユーザーの演者の皆さま】-------------------

Garvan Institute of Medical Research, Laboratory Head, Dr. Alex Swarbrick 
Landscape of the Breast Cancer Microenvironment at Single-Cell Resolution

熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 佐藤 賢文 先生 
HTLV-1感染病態解明へ向けた感染者血液のシングルセルトランスクリプトーム解析

富山大学医学部整形外科/Duke University Orthopaedic Surgery, 箭原 康人 先生
scRNA-seqを用いたRNA velocity解析;胎児卵黄嚢 erythro-myeloid progenitor由来破骨細胞は造血幹細胞非依存的に生ずる

東京大学大学院新領域創成科学研究科,鈴木 絢子先生
scATAC-seq/scRNA-seq解析:がん細胞のトランスクリプトーム不均一性解明に向けて
----------------------------------------------------------------------------

ご覧の通り、がんの微小環境、免疫、遺伝子発現、ATAC-Seqなどテーマが多彩に渡ります。また、10xからは、製品アップデート、Spatial、データビューワーの話、さらに当日データ解析ヘルプデスクも設ける予定です。

あと、今回初の試みとして、ライトニングトークセッションを行います。
これは一人5分の発表です。最大6名まで募集します。参加者枠はまだ少しあるので何か発表したい、共同研究者を探したい、という人は是非どうぞ。

ユーザー会が終わった後は情報交換会(という名の懇親会)がありますので是非どうぞ。すべて無料です。何かプレゼント的な、何かがあるかも。

10x Genomics ユーザーグループミーティングの登録はこちら


ちなみに先月行われた台湾でのユーザーグループミーティングは100人以上のお客さんが出席し、大反響でした。
写真は台湾代理店・PharmigeneさんのFBに上がっていますので雰囲気を味わいたい方はのぞいてみてくださいね。世基生物醫學股份有限公司 で検索すればかかってくると思います。
下一站6/28,10x與您相約東京見! 謝謝

シングルセル発現解析の比較 論文その2

前回に続いて、シングルセル解析の比較論文を探していたら良いものを見つけたのでシェアします。Broadのチームが行ったそうです。
前回と名前が似ている論文ですね、こちら
(この話はGenomeWebでも記事になっていますのでこちらもどうぞ)

彼らが比較しているのは以下の7種類のプラットフォームです。
Ding et al.,
Fig 1-b
細胞株の混合、末梢血単核球(PBMC)、およびマウス脳組織由来の細胞について、これら7種類のプラットフォームで解析しました。 さらに、シングル核RNA-Seqの方法も4つ、テストしています。合計で36のライブラリーを作成、約92,000のシングルセルから発現データを生成し比較しています。

彼らの定義では、Smart-Seq2とCell-Seq2は低スループット、10xをはじめとするその他Drop-Seq、Seq-Well、inDropsは高スループットとされています。低スループットの方はプレート上で数百の細胞を処理し、高スループットはそれ以外の技術で数千の細胞を処理可能、ということだと思います。この2つはどちらが良いかということではなく、それぞれ長所があると述べています。

彼らの結果のひとつとして、低スループット技術は高スループット技術に比べて検出できた遺伝子数・UMIの数が多かった、というのがありました。ただ、メソッドを読むと、
"We aimed for 50,000 to 100,000 reads per cell for high-throughput methods and 750,000 to 1,000,000 reads per cell for low-throughput methods. " 
とあって、ああ、低スループット装置の方は高スループット装置に比べて10倍近く、細胞あたりシークエンス読んでいるんだなと。ここは注意した方が良いです。10xも細胞あたりのリード数を増やしたら、、、もっと遺伝子検出しているはず。しかし処理できる細胞数が数千レベルと多いのでシーケンスコストが高くつきますね。

ここも目的によるのでしょうが、数百の細胞の解析で済む実験と、数千・数万の細胞の解析で得るデータではその実験の規模がだいぶ違います。数万の細胞実験はやはり、シークエンスのコストと精度とのトレードオフが常に問題になるでしょう。

それはさておき、彼らの結果では、高スループット装置の中では、10xのChromiumが一番遺伝子検出感度が高かったそうです。Version 3もちゃんと含まれていて素晴らしい! これは、数千細胞規模の実験をするなら10xのChromiumを使うのが一番良い、ということらしいです。
嬉しい結論。

このようにたくさんの技術をちゃんと比較するには、お金も時間もかかるし大変だと思いますので、Publicな論文があるととても助かりますよね。

今月28日、アキバで10x Genomics ユーザーグループミーティングを行います!
スポンサーも増えました
是非登録の上ご参加ください! 金曜日です プレミアムフライデーです!





2019年5月30日木曜日

シングルセル発現解析の比較 論文

シングルセル装置導入を検討されている方は当然、世にあるたくさんの技術、装置、プロトコルを比較したいでしょう。こういう情報はメーカーよりも第三者の中立な目から判断したものの方が信用しますよね。
そこで最近出たのはこの論文です。

様々な装置がある中で、著者らは現在良く使われている13種類のシングルセル・シングル核のRNA-Seqプロトコル(技術)を使い、同じ条件下で比較しています。同じサンプルを使い、データのフィルタリング条件やダウンサンプリング条件も同じにし、検出遺伝子の感度、クラスタリングの精度などを比較しています。
中立な立場での比較論文はなかなか貴重だと思います。
Mereu et al., Fig.1

この中で、Chromiumはどのような位置に評価されているかというと、
Mereu et al., Fig.4
クラスタリングの精度では13種類中、上から3番目、だそうです。
ただ、ここで皆さんに注意してもらいたいのは、彼らが実験に使用した試薬は、一世代前のVersion 2だということです。10xではご存知の通り、昨年、3’発現解析用の試薬はVersion 3になり、V2と比較して遺伝子の検出感度が大きく改善しました。
ですので、V3でもう一回やったら、この順位はもしかしたら・・・。

と言ってもキリがないですね。他の会社さんも試薬のバージョンアップしているかもしれませんし。とにかく、一世代前の試薬でも3位というのはすごいと思いました。

フリーの論文(BioRxv)ですし、特にメソッドのところ、解析についてかなり詳しく書いてあるのでオススメです。
オススメなんですが、あえて付け加えるとすると、、、

公平に比較するため、彼らはリードフィルタリングの条件やUMIカウントの条件、生細胞の条件など、解析パイプラインを統一しています。これは良いのかどうか。13種類のプロトコル全体に最適な条件があるとはちょっと思えないので、これはあくまで比較のために同条件で解析した、と考える方が良いのかなと思いました。

あと、ランニングコストについては触れられていません。論文のテーマ上仕方ないですが、これから装置を購入する人にとっては大事な点です。1実験あたりいくらかかるのか? どれだけ手を動かす必要があるのか(実験ワークフローの時間)? サポートは受けられるのか?
そういう点を考慮した上で、さらに1個前のバージョンの試薬でも3位だったことを考えると、今から購入を検討するならもちろん・・・


ところで私たちは6月28日(金)、東京秋葉原で10xユーザーグループミーティングを行います。国際ゲノム会議の翌日です。こちらもぜひ時間が合えばお越しください!
詳しくはこちらを参照ください!

2019年5月24日金曜日

EMBOとHCA 東京お台場にて

今週、5月20日から24日にかけて、EMBOシングルセルワークショップ(20日〜22日)、Human Cell Atlas General Meeting(23日、24日)がありました。これは国際学会。ということで本社からもCEOをはじめスタッフが数名来日しました。

私はマーケ担当なのでこういうブースとかを代理店さん(スクラムさん)と作ったり、
我々のブース
 こういうGiveawayとか、
これはUSBです
ブースでのLucky Draw(くじ引きなどでプレゼントが当たるアレ)を企画したり、
みんなで写真を撮ってシンガポールに送ってSNS(ツイッター)に載せてもらったり、
私もちゃっかり写ってます。私の隣の隣の隣がCEOです。
スポンサードトークのテーマはSingle Cell Immunologyで、本社VPに話してもらいました

ランチョンセミナーでは本社のプロダクトマネージャーに話してもらいました。司会は私。ちょっと緊張した
こんなことを行っていました。

みんなブースでのお客さん対応も行っていたから、終わって、どっと疲れが。
EMBOはこのような内容 ウェブサイト
でした。ツイッターの #EMBOsinglecellbio  #humancellatlasのタグも追って見ると面白いですよ。
EMBOは事務局発表によると320名(167名は日本から、153名は海外から)が参加されたそうです. 

HCAでもそうでしたが、シングルセル解析はだんだんSpatialな情報の発表も多くなってきました。これは組織の「どこで」発現していたのかを大規模に知ることが技術的に可能になってきたおかげです。10xでもこの分野はいち早く取り込み、Spatial Transcriptomics社の買収によって今後大きな貢献をすることになるでしょう。今から楽しみです。


さて、私たちは6月28日(金)、東京秋葉原で10xユーザーグループミーティングを行います。国際ゲノム会議の翌日です。こちらもぜひお楽しみに!
詳しくはこちらを参照ください!



2019年4月10日水曜日

来週アメリエフさんのオープンセミナーでお話しします



来週、4月18日の夕方、アメリエフさんのオープンセミナーにて、10x Genomics についてお話しすることになりました。そのあとのスクラム・松山さんのお話も含めて、シングルセル解析とは? どこに気をつけたら良いのか? など、ウェットの部分を中心にご紹介します。

その後、シークエンス受託会社の話のあと、アメリエフの山口さんから解析部分のお話がある予定です。

普段シングルセルで悩んでいること、聞けないようなことも、ぜひこの機会に質問してみてくださいね。


アメリエフさんのこのページの下の方にある、「お申し込み方法」をクリックして登録してください。
お待ちしていまーす!


シングルセルATAC-Seqのウェビナーはこちら



2019年4月8日月曜日

シングルセルATAC-Seqのウェビナーやります!

今年2回目のGetting Startedウェビナーのトピックは、シングルセルATAC−Seq!

この、Getting Startedウェビナーとは、初心者向けのやさしい内容を、シングルセル解析や10x Genomics の技術をあまりご存知無いかたに向けて、アジア時間で行うシリーズです。

日本語、英語、中国語で同じ内容、同じスライドを使ってプレゼンします。
プレゼンの内容は録画されるのであとで視聴することもできます。ぜひレジストしてくださいね。

日時
4月22日午後3時(日本時間)日本語です! 私が喋ります(緊張)

4月23日午後1時(日本時間)英語です。アメリカの製品担当、ローラが喋ります。外国人の研究者は、英語の方がわかりやすいかもしれませんからオススメします。って、このブログ自体が日本語でした。外国人研究者で興味ありそうな方がいましたら是非登録リンクを転送してください!



シングルセルATAC-Seqを始めよう
高解像度のエピゲノム解析

日本語版登録はこちら

英語版登録はこちら

このウェビナーでは、細胞におけるエピゲノムの多様性をシングルセルの解像度で解析できる、シングルセルATAC-Seq (Assay for Transposase-Accessible Chromatin)について、紹介します。この解析は、数百から数千のシングルセルにおいてゲノムワイドにオープンクロマチン領域解析を行える画期的な手法です。

内容は、

  • シングルセルATAC-Seq解析の概要
  • シングルセルATAC-Seqライブラリーおよびサンプル調製のベストプラクティス
  • シングルセルATAC-Seqを解析するソフトウェアおよび視覚化ツール

です。

このウェビナーシリーズは今後も積極的に続けていく予定です。
どんな内容が良いか、は各ウェビナーの最後のアンケートにて聞かれますので、皆さんのご意見ご要望をどうぞ宜しく、宜しくお願いします!

2019年4月6日土曜日

Spatial の素晴らしさが8分でわかるビデオ

先週のAACR(アメリカがん学会)に行かれたかたはいますか? 私も何年か前に行きましたがあれは巨大な学会ですよね。
最近の国際学会はウェブで中継するところもあるんですね。AACRも一部無料で公開していますし、一部はYouTubeにも載っています!
日本の学会ではまだ、無いですかねえ。

このリンクには無料でオープンプレナリーセッションが公開されています

私が特にオススメするのは、一番最後にある、
Wrap-up and opportunities for the future
John D Carpten
USC Keck School of Medicine, Los Angeles, CA, United States

これです。10x Genomics が昨年末に買収した Spatial Transcriptomicsの良いところがコンパクトかつサイエンティフィックにまとまっています。ビデオの長さは8分弱です。


Spatial Transcriptomicsのアプリケーションはまさにこれからのがん研究を加速する、そんな予感がしますね


2019年3月30日土曜日

新情報アップデート 10x Genomics

ブログの更新は随分とご無沙汰していました。2019年が始まり、アメリカ企業なのでQ1(1月〜3月)が始まり、日本ではこの時期は年度末。会社として新しい計画が動き出すと共に日本のアカデミアでは締めの季節。

もうすぐ新年度も迎えるタイミングですので、この際新情報をアップデートします


2月のAGBTでも発表されましたが、10xでは今年、3つのアップデートがあります。
ひとつめは「免疫プロファイリングデータベースの公開」
20万ものT細胞をターゲットにして、細胞表面タンパク質の発現、抗原タンパクの特異性、5’側の遺伝子発現、VDJ領域の完全長配列、という種類の情報を一度に、同一細胞から得たデータです。こんな大規模な解析は今までなかったと思います。
これがまもなく公開されます。このようなマルチオミクス解析が、Chromiumを使えば誰でもできるようになったのは、NGSが登場した時の衝撃に似ていると思いません?

二つめは「Spatial Transcriptomics」
これは前回も紹介しましたね。無数のウェルが仕込まれたスライドガラス上に、サンプルの切片を固定し、ウェルの中にあるバーコード付きのオリゴでサンプルのmRNAをキャプチャー、その後NGSで読みます。バーコードは各ウェルの位置情報と対応しているので、後でRNAの発現値と位置情報を結びつけて解析することができる、そんな技術です。
組織のどこに、どんな遺伝子が発現していたのかがわかるわけです。
これももう少ししたら具体的に、アナウンスされる予定です

三つ目は「Chromium Connect」
簡単にいうとオートメーションシステムです。Chromiumが内蔵されたサンプル自動化装置で、細胞混濁液を用意しさえすればあとはエマルジョン化からそのあとのcDNA作製〜NGSライブラリ作製まで自動で行ってくれる装置です。
夕方細胞が用意できた、っていう時もこの装置が夜中働いてくれるので、作業効率を大幅にUPできると思います!

と、ここまでのことでもっと詳細を知りたい方は、こちらから、登録してみてください。
10xから情報アップデートがあったらメールでお知らせが行くようになっています。
登録後にはこれらの説明ビデオも視聴できますよ。ぜひどうぞ!




2019年1月31日木曜日

Spatial Transcriptomics てどんな技術?

https://spatialtranscriptomics.com/
昨年末、10x Genomicsの仲間になったSpatial Transcriptomics
スウェーデンのこの会社、遺伝子の発現量を組織の場所情報と共に得ることで、組織のどの場所でどんな遺伝子が多く発現していたのかを、見ることができるすごい技術を持っているのです。

in situ hybridization ってご存知でしょうか? 私は昔、脳神経化学のラボで実験テクニシャンをやっていたことがあるのですが、その時初めてマウスの脳の切片をin situ hybridization をやったデータを見ました。この技術は遺伝子(メッセンジャーRNA)に対応するプローブを使って、組織切片のどの場所に目的遺伝子が発現していたのかを見ていたわけですが、NGSが出てくるずっと前の当時は最先端の技術でした。その頃マイクロアレイが登場し始めました。

もしin situ hybridization があらかじめ絞り込んだ遺伝子の発現を見る技術だとしたら、Spatial Transcriptomicsの技術は遺伝子を絞り込まずにRNA-Seqを使って網羅的に遺伝子の発現を見ることができます。

ワークフローはWebsiteに説明があります。
イメージとしてはスライドガラスに小さな(直径100μm)ウェルがたくさんあって、そこに切片を固定します。ウェルの底にはウェルごとのバーコード配列がついたキャプチャーオリゴがあって、組織のmRNAはオリゴにくっつきます。
その後cDNA作製からのNGSライブラリ作製へ進み、NGSで読む。読んだ後にデータ解析して、どのウェルバーコード(組織の場所を示す)のどの遺伝子がどれくらい発現していたのか、がわかるわけです。

https://spatialtranscriptomics.com/workflow/

この技術とシングルセルでの応用について、Scienceに「WEBINAR | Mining the transcriptome using spatial transcriptomics: Comprehensive 2D or 3D visualization of all mRNAs in tissue sections」があります。
昨年の6月6日に行われたウェビナーです。超おすすめですよ!

ここから登録するとウェビナーが視聴できます。




今(2019年1月)、Spatial Transcriptomicsは10xの一部です。

このSpace情報とOMICSを繋げて、Spatialomics「スペーシャロミクス」っていうそうです。これから流行るかな?

2019年1月28日月曜日

Linked Readでメタゲノムアセンブリの話

先週は暖かい国にて会社のミーティングでした。野生のイグアナに初めて遭遇。


帰ってきて日本の寒さがこたえます〜。


さて、メタゲノムの分野では、培養できない細菌のゲノムを決めるのが、ひとつのテーマとしてあるそうです。昨年からLinked Readを使って複数のゲノムを同時に決めるというのがちょっとしたブームになっていたのですが、今回、そのお話のウェビナーがありますので紹介します。


うーーん、日本時間は深夜2時か、、、
その時間での参加をお願いはいたしません。私もおそらく無理。多分録画されるはずなのでレジストする価値はありますよ。
こちらから、Webinar Registrationをクリックしてくださいね!

最近はほとんどシングルセルの話しかしてませんので、たまにはLinked Readも良いのではないでしょうか。
ちなみにメタゲノムアセンブリにはSupernovaは使えません。別のThird Partyツールを使います。


------------------------------------------------------------------------------------------------------
10x Line@ 始めましたのでお気軽に登録してくださーい!

友だち追加

2019年1月27日日曜日

TotalSeq 細胞表面タンパクと細胞内遺伝子発現を同時計測(2)

BioLegend社のTotalSeqのベージ
前回、Total-Seqの新製品が出たとお伝えしました。
今までのがTotalSeq A、新製品はTotalSeq B、TotalSeq Cです。

AとBとCとで何が違うの?というと、対応する10x Genomicsのキットの種類が異なります。

  • A: 3'-Expression Ver.2 キット用(Ver.3 キットでも使用は可能)
  • B: 3'-Expression Ver.3 キット用(Ver.2 キットでは使用できない)
  • C: 5'-Expression (5’キット専用)
抗体についているキャプチャーオリゴ配列が、それぞれ10xのキットのキャプチャー配列に合わせて設計されているのです。

他の違いは、
  • BとCは、10x Genomicsがプロトコルと解析用のソフトウェアをサポートしている(Aはサポート対象外)
  • BとCは、2019年1月現在、製品ラインナップがAより少ない

ヨーロッパのベータ版ユーザの話によると、BとCはとても良いとのことです。(これ聞いて正直安心しました〜)
日本でもリリースされたことだし、年度末にかけて、どうですか?(笑)


------------------------------------------------------------------------------------------------------
10x Line@ 始めましたのでお気軽に登録してくださーい!

友だち追加

2019年1月26日土曜日

Total-Seq 細胞表面タンパクと細胞内遺伝子発現を同時計測(1)

皆さんCITE-Seqってご存じですか?
Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by sequencing
のことで、ざっくり言うと、
RNA-Seqと細胞表面タンパクの発現を同時に、シングルセルレベルで解析する技術
です。

CITE-Seqというそのままの名前のウェブサイトもありますね。
詳しく知りたい方はこちらの2つの論文が詳しいのでお勧めです。

Multiplexed quantification of proteins and transcripts in single cells
Peterson et al. Nature Biotechnology volume 35, pages 936-939 (2017)
doi:10.1038/nbt.3973

Large-scale simultaneous measurement of epitopes and transcriptomes in single cells
-> Simultaneous epitope and transcriptome measurement in single cells
Stoeckius et al. Nature Methods volume 14, pages 865-868 (2017)
doi:10.1038/nmeth.4380


細胞の表面タンパクを調べるならフローサイトメーターという便利な機械があるじゃないか、と思われるかたも多いと思います。フローサイトは、細胞マーカータンパクに対応する抗体を用いて細胞を染色し(その抗体には蛍光がついています)、レーザーで蛍光を光らせて、どんな抗体があったのかを測ります。
免疫細胞には色々な種類の細胞があり、それぞれ特徴的に発現している遺伝子があります。細胞特異的に発現している遺伝子=タンパク質が、細胞表面に現れるところを抗体を使って測っています。
ということは、対応する抗原=細胞表面タンパク=細胞マーカーを測るということになるので、間接的にどんな種類の細胞がサンプルに含まれていたのか、がわかるのです。

CITE-Seqも抗体を使って細胞を区別します。その上さらに、mRNAの情報もシングルセル単位で取ってくることができます。ではmRNAの情報を取る理由は何でしょう?

まあこれがシングルセル発現実験が行われる理由でもあるのですが、抗体を使った細胞分類方法は、

  1. 既知の高発現タンパクの抗体を使っている
  2. 一度に分類できる抗体の数は蛍光とレーザー波長とに依存する→たくさんの抗体を一度に分類しようとすると高価な装置が必要
  3. 未知の細胞の分類には対応できない(どんなタンパクが高発現しているかわからない細胞は分類できない)

という特徴があります

これを教師あり分類、と呼ぶならば、遺伝子発現情報を使って細胞種を分類する方法を教師なし分類と呼べるでしょう。遺伝子発現の情報(mRNAのカウント)を使えば未知の細胞群を見つけることだって可能です。

CITE-Seqは、これまでの抗体免疫染色で細胞分類を行なっていた方法と、シングルセルNGS発現解析を組み合わせたところが画期的です。抗体は使いますが、その抗体を測るときに蛍光を使いません。抗体にはその抗体特異的なオリゴ配列がついていて、そのオリゴ配列をNGSで読むことで抗体を認識するのです。

細胞単位で、

  1. どの抗体が細胞表面にあったのか、がNGSでわかる
  2. どんなmRNAが細胞内にあったのか、がNGSでわかる
  3. これらのデータは同じシングルセル由来だったのか違うシングルセル由来だったのか、バーコード配列で区別できる
  4. 分類に使う抗体の種類の上限は(理論的には)アンリミテッド
10xのChromiumはもちろんこのCITE–Seqに対応しています。昨年の春にBioLegend社がTotal-Seqという名前で製品化しました。もうすぐ1年経ちますね。そして最近新製品が出ました!



2019年1月10日木曜日

年明けから景気の良い話 JPモルガンヘルスケア

昨年末から風邪が治りません。さすがに、そろそろコートを着た方が良いのかな?なんて思ったり。症状は軽いから働けるのですがなんかいつもの9割くらいのパワーしか出ない。そこでこんなのを飲んで早く回復しようと

匂いはザ、朝鮮人参。味はシロップみたいな、まさかの甘口! このギャップがすごい!
栄養ドリンクなんでしょうかねえ。台北のファミマで見つけました。早く元気100%になりますように。


さて、この時期話題になっているのが毎年恒例、JPモルガンヘルスケアコンファレンス。話題のバイオテック企業が一堂に揃って、景気の良い話をする場所です。この時期に合わせて新製品を打ち出してくる会社も多いので注目されるわけです。
以前書いた記事はこちら


で、10xも初日にCEOが登場してどかーんと景気いい話をしました。

3500万ドルのシリーズD追加資金調達成功

シリーズDって何?という方はこのページが詳しいです。簡単にいうとある程度順調に成長を続けていてさらに今後成長が見込まれるようなベンチャーの状態、フェーズ、です。A、B、Cとだんだん大きくなっていくんですね。夢があるなあ。

ちなみに資金を投資している会社の中には、大手アメリカの銀行の他にも、我らがソフトバンクもあります。
なぜそんなに投資してもらえるのかと言えば、会社に元気があるからでしょう。CEOのSerge Saxonov はプレゼンの中で、「売上は2017年の7100万ドルから2018年は1億4600万ドルへと2倍になった。装置の数も500台から1000台以上に増え、4000人以上のアクティブユーザーを持つまでになった」と語ったそうです。


シングルセルの市場はまだ始まったばかり。より一層市場規模は大きくなると投資家が判断しているからこそ、お金が集まるんでしょうね。
特に最近買収したSpatial Transcriptomicsは、組織切片のサンプルを位置情報をそのまま持ったまま(細胞をバラバラにしないので)発現解析することができる技術を持っています。
これは別の記事にしますが、組織切片のあるエリアの細胞たちの遺伝子発現が、バーコード配列によって後でどのエリア由来か判別できれば、元々どこの組織エリアで発現していたのか後でわかるのです。
この技術はとても注目されていて、10xが持っているシングルセル解析を組み合わせれば、今までシングルセルではわからなかった場所の情報を得ることもできるのです。
AIやロボットなど新しい分野に積極的に投資しているソフトバンクグループが10xに投資しているのもわかる気がします。シングルセル解析にAIが加わったらどうなるんだろう。

JPモルガンの記事は先のGenomeWebの他にも、
VentureBeatFierceBiotechなどに記載があります。
10xのプレスリリースはこちらです。

さらに、10xのCEOのインタビュービデオもここから視聴できますので興味のある方はぜひどうぞ。







2019年1月6日日曜日

10x Genomicsの受託解析会社のまとめ(国内)

明けましておめでとうございます。
私は昨年の7月に今の会社に転職して、色々と慌ただしく過ぎていった半年間でしたが、今年はもっと(良い意味で)慌ただしくなるような予感がします。

昨年展示会ブースでお話しした中で、一番多かった質問は「どこかで受託解析しているところありますか?」というものでした。ですので本年最初の記事は受託会社のまとめ、にします。

これから紹介する会社さんは、10x Genomics社がオフィシャルにオススメしている会社、という訳ではありません。各社のウェブサイトや学会展示会にて、シングルセル解析またはLinked-Read解析をサービスとして紹介していた会社に私がコンタクトをとり、実際に話して得た(または前から知っていた)情報です。
と言っても、細かいサービス内容や価格は各社公にして欲しく無いと思いますので詳細はここでは書きません。価格やメニューなどはそれぞれコンタクトして聞いてくださいね。

以下、

  • 自社でChromiumとNGSシークエンサーを揃えて、サービスを展開している会社
  • データ解析受託を中心にサービスを揃えている会社

の順で紹介します。
その中での並びは単純に50音順、です。

実験からシークエンスまで自社で受託している会社


次にあげる2社は、ChromiumもNGSシークエンサーも自社で揃えています。学会展示会などでブースを見かけることも多いのではないでしょうか。NGSは塩基単位でのコストは下がっているとはいえ、それでも1回のランニングコストは結構しますので、シークエンスも外注の選択肢になるでしょう。

日本ジーンウィズ株式会社

RNAシーケンシングのメニューの中にシングルセル発現解析の紹介があります。右側のリンクをクリックするとPDFのチラシがダウンロードできるようです。発現解析以外にも、シングルセルのアプリケーションは色々と揃えていくようです。

タカラバイオ株式会社

ハプロタイプフェージング解析は、ヒトゲノムの構造解析のひとつで、ChromiumのLinked Readを使って行なっています。ウェブサイト上では、シングルセルではなくLinked-Readの受託実験解析しか見つけられませんでした。



上記の2社はChromiumを持っていて、NGSも自社でシークエンスできる会社です。お客さんがChromiumシステムを持っている場合、シングルセル用のNGSライブラリまでを自分で作成し、そのあとのNGSシークエンスを受託会社に外注する、ということもあり得るでしょう。10xのライブラリは少し特殊なので、ジーンウィズさんやタカラバイオさんのように自社でChromiumを持っているところにお願いする方が安心でしょうね。


ちなみに、NGS一般で言うと、実験は海外に外注し解析だけ国内で行う会社はあります。実験と解析全て海外外注で国内では窓口だけを請け負う会社もあります。正しいデータがちゃんと取れればどこで読んでも同じだと思いますが、気にされる方は最初に聞いておいた方が良いでしょう。
シングルセル解析はまだあまりメジャーではないのか、またはサンプル輸送の面で制限があるのか、海外のシングルセル実験受託の広告は見たことがありません(私が見たことが無いだけかもしれませんが)。

では、10x Genomicsのデータ解析をサービスとして行なっている会社にはどこがあるでしょうか?

データ解析を中心にサービスを提供している会社


まず初めに、この種のサービスは価格が付けにくいという性格があります。私も実は前々職で同じようなことをしていましたが、データ解析というのは実に千差万別で、お客さんのニーズが同じだったことはありません。しかし価格が無いと売れないわけで、ワークフローを一応作って価格を付けて売ったあと、無料オプション解析ということもありました。あるいは色々なオプションを付けてパッケージにして販売したことも。

なので一見、価格が高いと思うサービスがあったとしても、そのサービスがどこまでカバーしているのか(再解析の有無や、結果打ち合わせの回数、トレーニングの有無など)を聞いてみた方が良いと思います。

では、まずは自社のウェブサイトにシングルセル解析の記載がある会社から。

アメリエフ株式会社

トップページにシングルセル解析が紹介されています

シングルセル解析の専用ページもありました。

アメリエフさんではシングルセル初心者の方でも解析のイロハを取得できるように、トレーニングメニューも充実しているとのこと。解析ツールの開発も行なっています。

株式会社ジエンブル

福岡の会社で、NGS解析に特化した会社です。実験のコンサルティングから相談に乗ってくれるそうです。サービスのページはこちら。2月末までの注文に限りシングルセルRNA-Seqの解析キャンペーンをやっているみたいです(PDFチラシはこちらから


次に紹介する会社は、ウェブサイトでは「10xのデータ解析をしています」とはっきり書かれていないけれど実際はNGSデータ解析サービスの中に含まれていて、実績もあるところ。
もしウェブサイトに書かれていたらすみません。私がみつけられなかっただけです。
教えて頂けたら訂正します。

アクシオヘリックス株式会社

NGS現場の会のメーリスでも良く登場しますね。PictBioというのは受託解析サービスのことだそうです。シングルセル発現解析はNGS解析の一部に組み込まれています


株式会社ダイナコム

ここはSNPAlyzeなどのソフトウェアの販売で知っている方もいると思いますが、バイオインフォマティクスのサービスも充実しています。ウェブサイトには載っていませんが、Cell Ranger(10xが提供しているシングルセル解析のツール)を流すだけの単純解析も可能、その後のシングルセル系のインフォ解析も充実しているそうです。


その他

解析環境を提供している会社

データ解析は高スペックのサーバーが必要です。NGSデータを扱うわけですからね。
これはクラスターでは無い場合の、Cell Rangerの最低必要スペックです。
詳しくはこちら

シングルセル発現解析では、1セルあたり2万5000本〜5万本のリードが必要十分とされています。仮に1サンプルで1万セルを解析するとして、サンプルあたり2億5000万本〜5億本のリードが必要。HiSeq2000でも数レーンは必要でしょう。
NovaSeq6000のS1フローセルを使えば4サンプル程度は流せる計算になるでしょうか。いずれにしても相当数のリードをカウント、マッピングしないといけません。

株式会社ジーンベイ

シングルセル解析ではありませんが、Linked-Readを使ったデノボアセンブリは実績があるそうです。
面白いところでは解析パイプライン環境をクラウドに構築し、お客さんはそこで解析できるようにするというサービスです。シーケンスデータ解析クラウド、そのままわかりやすい名前ですね。
これはあくまで計算環境をクラウドで提供するというビジネスなので、お客さんはある程度データの解釈ができることが前提、のように思います。シングルセル用の環境はまだ(2018年12月現在)準備されていませんが、需要があれば載せることも検討とのことです。

株式会社 ナベ インターナショナル

計算環境を自前で用意したいというお客さん向けです。NGS解析専用サーバを組み立てて販売するビジネスモデルです。こちら
Takeruという名前はご存知の方も多いのではないでしょうか? 学会展示会でよくサーバーを展示しているところを見かけます。シングルセル発現解析専用サーバーの販売実績もあるそうです。
結果の解釈はお客さんにお任せしています。コマンドラインをガンガン使える玄人向けサービスと言えるでしょう。



いかがだったでしょうか。上記にあげた会社はどこも、10xのデータ解析をビジネスとして行なったことのある会社です。
最初に書いた通り、10x Genomics社がオフィシャルにお勧めしているわけではありません。私が個人的に聞いて集めた情報になります。なのでもしかしたら「うちでも10xデータ解析やってますよ」という会社があるかもしれませんね。追加していく方針です。

あと、今は10xデータ解析は経験無いけれど、多分絶対できるはず!という会社もいくつかありますので、そこはキャッチしていきますね。


では、2019年がみなさんにとって更なる飛躍の年になりますように!