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2021年10月10日日曜日

第80回 日本癌学会学術総会

10月になり、朝晩は涼しくなってきましたね(東京)。今日は三日月

今年の癌学会は初日の9月30日が緊急事態宣言最終日、2日目の10月1日が台風で暴風雨、3日目になってようやく晴れるという、現地参加者にとってはなかなか厳しい日程でした。

私たちはブースも出して3日目にランチョンも行ったので通しで現地にいました。皆さんも知っているかもしれませんがパシフィコ横浜は、会議場と展示会場が少し離れています。移動するには一旦外に出ないといけないので(裏技はあるんだけど)、2日目は暴風雨のせいでほとんど展示会場に人は来ませんでした。

コロナ下での学会はほとんどがハイブリッド。その中で現地に来る研究者はどれくらいいるんだろう?って、始まるまでずーっと心配でしたが、会議場の方は意外とたくさんの人が現地参加していました。事務局発表では1,500名が現地参加、リモート参加が1,700名だったらしいです。

ほとんどの大きなセッションはオンデマンドもあるのでこれから参加する人も結構いるんでしょうかね。

今回は展示会場もかなりソーシャルディスタンス。ブースとブースの間が広々していましたが展示企業の数は少なかったですね。

そうです、今回Chromium X の実機を初めて公開しました!


向かって左側がX  右側が今までのController

今回の癌学会で特に思ったのは、シングルセルの発表が多かったこと。

私もツイッターで呟いていましたけれど、明らかにRNAシーケンスはバルクからシングルセルに移っているように感じました(もちろんバルクで十分な実験もあるけど)。今回Single Cellでタイトルを検索すると38の発表があったことがわかりました。実際はタイトルにはSingle Cellと書いていなくても手法としてシングルセルを使っていた発表もあったと思うから実数はそれよりはるかに多いと思います。(その38の発表はこちらにリストでまとめました)

特に以下の3つのセッションはシングルセルとマルチオミックス がメインテーマでした。おすすめです(全てオンデマンドあり)

  • CS2 一細胞解像度のがん生物学
  • IC10 がんのシングルセル・空間トランスクリプトーム解析
  • IS11 がん研究における一細胞解析
オンデマンドは10月18日から11月12日までだそうです。


2019年1月27日日曜日

TotalSeq 細胞表面タンパクと細胞内遺伝子発現を同時計測(2)

BioLegend社のTotalSeqのベージ
前回、Total-Seqの新製品が出たとお伝えしました。
今までのがTotalSeq A、新製品はTotalSeq B、TotalSeq Cです。

AとBとCとで何が違うの?というと、対応する10x Genomicsのキットの種類が異なります。

  • A: 3'-Expression Ver.2 キット用(Ver.3 キットでも使用は可能)
  • B: 3'-Expression Ver.3 キット用(Ver.2 キットでは使用できない)
  • C: 5'-Expression (5’キット専用)
抗体についているキャプチャーオリゴ配列が、それぞれ10xのキットのキャプチャー配列に合わせて設計されているのです。

他の違いは、
  • BとCは、10x Genomicsがプロトコルと解析用のソフトウェアをサポートしている(Aはサポート対象外)
  • BとCは、2019年1月現在、製品ラインナップがAより少ない

ヨーロッパのベータ版ユーザの話によると、BとCはとても良いとのことです。(これ聞いて正直安心しました〜)
日本でもリリースされたことだし、年度末にかけて、どうですか?(笑)


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2019年1月26日土曜日

Total-Seq 細胞表面タンパクと細胞内遺伝子発現を同時計測(1)

皆さんCITE-Seqってご存じですか?
Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by sequencing
のことで、ざっくり言うと、
RNA-Seqと細胞表面タンパクの発現を同時に、シングルセルレベルで解析する技術
です。

CITE-Seqというそのままの名前のウェブサイトもありますね。
詳しく知りたい方はこちらの2つの論文が詳しいのでお勧めです。

Multiplexed quantification of proteins and transcripts in single cells
Peterson et al. Nature Biotechnology volume 35, pages 936-939 (2017)
doi:10.1038/nbt.3973

Large-scale simultaneous measurement of epitopes and transcriptomes in single cells
-> Simultaneous epitope and transcriptome measurement in single cells
Stoeckius et al. Nature Methods volume 14, pages 865-868 (2017)
doi:10.1038/nmeth.4380


細胞の表面タンパクを調べるならフローサイトメーターという便利な機械があるじゃないか、と思われるかたも多いと思います。フローサイトは、細胞マーカータンパクに対応する抗体を用いて細胞を染色し(その抗体には蛍光がついています)、レーザーで蛍光を光らせて、どんな抗体があったのかを測ります。
免疫細胞には色々な種類の細胞があり、それぞれ特徴的に発現している遺伝子があります。細胞特異的に発現している遺伝子=タンパク質が、細胞表面に現れるところを抗体を使って測っています。
ということは、対応する抗原=細胞表面タンパク=細胞マーカーを測るということになるので、間接的にどんな種類の細胞がサンプルに含まれていたのか、がわかるのです。

CITE-Seqも抗体を使って細胞を区別します。その上さらに、mRNAの情報もシングルセル単位で取ってくることができます。ではmRNAの情報を取る理由は何でしょう?

まあこれがシングルセル発現実験が行われる理由でもあるのですが、抗体を使った細胞分類方法は、

  1. 既知の高発現タンパクの抗体を使っている
  2. 一度に分類できる抗体の数は蛍光とレーザー波長とに依存する→たくさんの抗体を一度に分類しようとすると高価な装置が必要
  3. 未知の細胞の分類には対応できない(どんなタンパクが高発現しているかわからない細胞は分類できない)

という特徴があります

これを教師あり分類、と呼ぶならば、遺伝子発現情報を使って細胞種を分類する方法を教師なし分類と呼べるでしょう。遺伝子発現の情報(mRNAのカウント)を使えば未知の細胞群を見つけることだって可能です。

CITE-Seqは、これまでの抗体免疫染色で細胞分類を行なっていた方法と、シングルセルNGS発現解析を組み合わせたところが画期的です。抗体は使いますが、その抗体を測るときに蛍光を使いません。抗体にはその抗体特異的なオリゴ配列がついていて、そのオリゴ配列をNGSで読むことで抗体を認識するのです。

細胞単位で、

  1. どの抗体が細胞表面にあったのか、がNGSでわかる
  2. どんなmRNAが細胞内にあったのか、がNGSでわかる
  3. これらのデータは同じシングルセル由来だったのか違うシングルセル由来だったのか、バーコード配列で区別できる
  4. 分類に使う抗体の種類の上限は(理論的には)アンリミテッド
10xのChromiumはもちろんこのCITE–Seqに対応しています。昨年の春にBioLegend社がTotal-Seqという名前で製品化しました。もうすぐ1年経ちますね。そして最近新製品が出ました!



2018年8月17日金曜日

Chromiumはどんな細胞サイズも多分 OK


前回、Chromiumの特徴をいくつかあげました。
  • チップ1つに8サンプル(8チャンネル)流すことができる
  • ゲノムDNAなら1ngからスタート(長いDNAにサイズセレクションしていること)
  • 細胞なら100個から10,000個までを1チャンネルに流せる
  • 細胞のサイズは結構フレキシブル 小さい細胞もOK
  • ランした細胞の65%までをキャプチャーできる
  • 3’発現解析のフローの場合ラン時間はたったの7分(ゲノムの場合は20分)
このうち、細胞のサイズについて少し付け足します。
細胞、と言ってもその大きさは様々ですよね。
小さいものだと血小板や赤血球は直径数ミクロン(2 μm - 8 μm)
線維芽細胞で10 μm - 15 μm
軟骨細胞で約20 μm
マクロファージはもっと大きくて20 μm - 80 μm
がん細胞株や、神経細胞、肝臓細胞なども大きい

Chromiumのシングルセル技術は、2 μm の細胞も、大きな細胞もキャプチャーすることができます(正確には、シングルセルRNA-Seqの場合は細胞の大きさに制限は無い修正:とてつもなく大きい細胞の場合、流路を通り抜けることができません。その時は細胞ではなく、核を抽出して流す、というプロトコルがあります。それを使えば細胞の大きさに制限は無い、という意味でした)ですが、シングルセルCNV解析の場合、2018年8月の段階では30μmのサイズまではテスト済み)。
これは他社の技術と違う点です。
様々なサイズの細胞を取りこぼし無く解析できるということは、それだけ正確に組織中で何が起きているかを知ることになるわけです。


もうひとつ、Chromiumの特徴をあげるとすると、
ワークフローが完結する、ということ。

シングルセルを準備するのはユーザーの仕事ですが、そこから先の、
シングルセル内で発現しているRNAや、シングルセルの中に含まれるDNAに、10xのバーコードを付けて、イルミナシークエンサー用のライブラリを作る
まではChromiumがやってくれます。

ゲノムの場合は、ユーザーが高分子DNAを用意し、そこから先は、
DNAフラグメントに10xバーコードを付けて、これまたイルミナシークエンサー用のペアエンドライブラリを作る
までChromiumがやってくれます。

その先のシークエンスはHiSeqなどを使って行ってもらう必要がありますが、出てきたデータの解析は、フリーのLinuxソフトウェアがあります。
コマンドラインになりますが、それほど複雑ではありません。(と言っても全くコマンド使ったこと無い人には敷居は高いかもしれない。実際は、誰かバイオインフォに詳しい人に最初は助けてもらう方が良いと思います)

で、解析後のビューワーは充実しています(シングルセル解析の場合)。
ゲノムアセンブリは大抵、他の技術(例えばPacBioとかHi-Cとか)と組み合わせて解析すると思うので、10人いれば10通りの解析手段があると思うんです。
倍数体とかもバラバラですし。

でもシングルセルの場合は、今までバルク(細胞集団)で行ってきた発現解析やCNV解析などを、1細胞のレベルで解析するということなので、アイデア自体は突飛なことも無いのかなと思うのです。

ただ解析して出てくる結果の解釈が今までと考え方を変えないといけないでしょうね。
これまでバルクでやっていた発現解析は、細胞集団の発現の平均で、異なる組織やタイムポイントなどで比較していたと思います。
それが今度は細胞集団の中でいろんなパターンの発現を示す細胞を見ないといけない。
次元がグッと広がるんです。



付属するビューワーは良くできていて、解析結果をパッと見るフリーツールにしては完成度が高いです。
でもそこからバイオロジカルな答えを導き出すのは、ソフトウェアでは無くて研究者の仕事ですよね。
つくづく、研究者ってすごいなーと思いますよ。こういう業界にいると。


さて、シングルセルといえば、細胞壁のある植物細胞のシングルセル解析は難しいと一般に信じられているかもしれません。
ところが先日とあるユーザーさんが、植物細胞でシングルセル解析をしていることを知りました。
酵素で細胞壁を壊してProtoplastにして、Chromiumに流しているらしい。
まだそれ以上はオープンでありませんが、「結構いける」らしいので、そのうちここでも紹介しますね


2018年8月13日月曜日

GemCode, GEM, とは?

(注意:ここに書いてあった文章は2019年1月に削除しました。すみません)


コアの技術はGemCode Technology
これは、マイクロ流路チップの中で、高分子DNAや細胞を数万ものGEMと呼ばれる液滴に分けることができる技術です。
その後、温度管理されたインキュベーションを経て、GEMの中に分けられた高分子DNAフラグメントやcDNA は、もともとのGEMごとにユニークな10xバーコードが付けられるのです。
この10xバーコードは16塩基から構成され、Gel Beadsというビーズにたくさん結合しています。
このバーコード付きのビーズが含まれたナノリットルサイズの液滴のことを、GEM(Gel Bead in Emulsion)と呼んでいます。



 マイクロ流路の中には、10xバーコードが付いたGel Beads(図中では赤や緑の丸)、細胞と酵素(液体と下からの丸)が左側から押し出され、二番目の管にはオイルが流し込まれます。
そうすると上手い具合にGel Beads1個が、オイルの中で液滴に含まれるようになります。
この辺は絶妙な流路の細さなんですよね。

この液滴(GEM)には、細胞は限界まで希釈されて流されます。およそ90〜99%のGEMには細胞は入らず、空っぽです。そうすることで、GEM1つに複数の細胞が入ることを防いでいます。(←ここの文章が前回少し誤解を招きそうだったので修正しました

細胞がちゃんとキャプチャーできる割合は、最大65%です。
そんなもんなん?って言わないでください。結構高い割合ですよ。
この数字が高いほど、失う細胞も少なくて済みます。

ひとつのGEMに2つ以上の細胞が入る確率は、アプライする細胞の濃度によって変わります。
濃度を薄くすれば2つ以上入る確率は低くなり、例えば1700個程度の細胞をランすると2つ以上の細胞が入る確率は0.8% 程度だけれど、10倍の細胞を流したらこの確率は8%に増えるらしい。
ただ、取得できる細胞の数も10倍に増えるので、この2個以上の細胞が入る割合(Doublet Rateという)は取りたい細胞数とのトレードオフになります。

ま、そんなこんなでGEMの中にキャプチャーされた細胞は、酵素処理されて直ちに融解。
発現していたメッセンジャーRNAは、Gel Beads表面のバーコードが付いたPoly-Tオリゴ配列と結合して、cDNAに逆転写される。
注意;これは発現解析の場合です。

Gel Beadsの1個につき1種類のユニークな10xバーコードが付いています。別の言い方をすると1万個のGel Beadsには1万種類のユニークなバーコードがGel Beadsごとに振られているということ。
ランして、Gel Beadsが入った液滴(GEM)には1つの細胞が入っている、とします。
つまり、細胞が溶解してビーズに結合したRNAからのcDNAには、もともとの細胞ユニークなバーコードが振られる、ということ。

こうして反応されたcDNA に付いているバーコード配列は、もしその配列が同じなら、もともと同じ細胞由来の遺伝子発現だったということがわかるのです!

Chromiumは、このGEMテクノロジーを使って

  • チップ1つに8サンプル(8チャンネル)流すことができる
  • ゲノムDNAなら1ngからスタート(長いDNAにサイズセレクションしていること)
  • 細胞なら100個から10,000個までを1チャンネルに流せる
  • 細胞のサイズは結構フレキシブル 小さい細胞もOK
  • ランした細胞の65%までをキャプチャーできる
  • 3’発現解析のフローの場合ラン時間はたったの7分(ゲノムの場合は20分)

ということができる装置なのです。