2019年6月4日火曜日

シングルセル発現解析の比較 論文その2

前回に続いて、シングルセル解析の比較論文を探していたら良いものを見つけたのでシェアします。Broadのチームが行ったそうです。
前回と名前が似ている論文ですね、こちら
(この話はGenomeWebでも記事になっていますのでこちらもどうぞ)

彼らが比較しているのは以下の7種類のプラットフォームです。
Ding et al.,
Fig 1-b
細胞株の混合、末梢血単核球(PBMC)、およびマウス脳組織由来の細胞について、これら7種類のプラットフォームで解析しました。 さらに、シングル核RNA-Seqの方法も4つ、テストしています。合計で36のライブラリーを作成、約92,000のシングルセルから発現データを生成し比較しています。

彼らの定義では、Smart-Seq2とCell-Seq2は低スループット、10xをはじめとするその他Drop-Seq、Seq-Well、inDropsは高スループットとされています。低スループットの方はプレート上で数百の細胞を処理し、高スループットはそれ以外の技術で数千の細胞を処理可能、ということだと思います。この2つはどちらが良いかということではなく、それぞれ長所があると述べています。

彼らの結果のひとつとして、低スループット技術は高スループット技術に比べて検出できた遺伝子数・UMIの数が多かった、というのがありました。ただ、メソッドを読むと、
"We aimed for 50,000 to 100,000 reads per cell for high-throughput methods and 750,000 to 1,000,000 reads per cell for low-throughput methods. " 
とあって、ああ、低スループット装置の方は高スループット装置に比べて10倍近く、細胞あたりシークエンス読んでいるんだなと。ここは注意した方が良いです。10xも細胞あたりのリード数を増やしたら、、、もっと遺伝子検出しているはず。しかし処理できる細胞数が数千レベルと多いのでシーケンスコストが高くつきますね。

ここも目的によるのでしょうが、数百の細胞の解析で済む実験と、数千・数万の細胞の解析で得るデータではその実験の規模がだいぶ違います。数万の細胞実験はやはり、シークエンスのコストと精度とのトレードオフが常に問題になるでしょう。

それはさておき、彼らの結果では、高スループット装置の中では、10xのChromiumが一番遺伝子検出感度が高かったそうです。Version 3もちゃんと含まれていて素晴らしい! これは、数千細胞規模の実験をするなら10xのChromiumを使うのが一番良い、ということらしいです。
嬉しい結論。

このようにたくさんの技術をちゃんと比較するには、お金も時間もかかるし大変だと思いますので、Publicな論文があるととても助かりますよね。

今月28日、アキバで10x Genomics ユーザーグループミーティングを行います!
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是非登録の上ご参加ください! 金曜日です プレミアムフライデーです!





2019年5月30日木曜日

シングルセル発現解析の比較 論文

シングルセル装置導入を検討されている方は当然、世にあるたくさんの技術、装置、プロトコルを比較したいでしょう。こういう情報はメーカーよりも第三者の中立な目から判断したものの方が信用しますよね。
そこで最近出たのはこの論文です。

様々な装置がある中で、著者らは現在良く使われている13種類のシングルセル・シングル核のRNA-Seqプロトコル(技術)を使い、同じ条件下で比較しています。同じサンプルを使い、データのフィルタリング条件やダウンサンプリング条件も同じにし、検出遺伝子の感度、クラスタリングの精度などを比較しています。
中立な立場での比較論文はなかなか貴重だと思います。
Mereu et al., Fig.1

この中で、Chromiumはどのような位置に評価されているかというと、
Mereu et al., Fig.4
クラスタリングの精度では13種類中、上から3番目、だそうです。
ただ、ここで皆さんに注意してもらいたいのは、彼らが実験に使用した試薬は、一世代前のVersion 2だということです。10xではご存知の通り、昨年、3’発現解析用の試薬はVersion 3になり、V2と比較して遺伝子の検出感度が大きく改善しました。
ですので、V3でもう一回やったら、この順位はもしかしたら・・・。

と言ってもキリがないですね。他の会社さんも試薬のバージョンアップしているかもしれませんし。とにかく、一世代前の試薬でも3位というのはすごいと思いました。

フリーの論文(BioRxv)ですし、特にメソッドのところ、解析についてかなり詳しく書いてあるのでオススメです。
オススメなんですが、あえて付け加えるとすると、、、

公平に比較するため、彼らはリードフィルタリングの条件やUMIカウントの条件、生細胞の条件など、解析パイプラインを統一しています。これは良いのかどうか。13種類のプロトコル全体に最適な条件があるとはちょっと思えないので、これはあくまで比較のために同条件で解析した、と考える方が良いのかなと思いました。

あと、ランニングコストについては触れられていません。論文のテーマ上仕方ないですが、これから装置を購入する人にとっては大事な点です。1実験あたりいくらかかるのか? どれだけ手を動かす必要があるのか(実験ワークフローの時間)? サポートは受けられるのか?
そういう点を考慮した上で、さらに1個前のバージョンの試薬でも3位だったことを考えると、今から購入を検討するならもちろん・・・


ところで私たちは6月28日(金)、東京秋葉原で10xユーザーグループミーティングを行います。国際ゲノム会議の翌日です。こちらもぜひ時間が合えばお越しください!
詳しくはこちらを参照ください!

2019年5月24日金曜日

EMBOとHCA 東京お台場にて

今週、5月20日から24日にかけて、EMBOシングルセルワークショップ(20日〜22日)、Human Cell Atlas General Meeting(23日、24日)がありました。これは国際学会。ということで本社からもCEOをはじめスタッフが数名来日しました。

私はマーケ担当なのでこういうブースとかを代理店さん(スクラムさん)と作ったり、
我々のブース
 こういうGiveawayとか、
これはUSBです
ブースでのLucky Draw(くじ引きなどでプレゼントが当たるアレ)を企画したり、
みんなで写真を撮ってシンガポールに送ってSNS(ツイッター)に載せてもらったり、
私もちゃっかり写ってます。私の隣の隣の隣がCEOです。
スポンサードトークのテーマはSingle Cell Immunologyで、本社VPに話してもらいました

ランチョンセミナーでは本社のプロダクトマネージャーに話してもらいました。司会は私。ちょっと緊張した
こんなことを行っていました。

みんなブースでのお客さん対応も行っていたから、終わって、どっと疲れが。
EMBOはこのような内容 ウェブサイト
でした。ツイッターの #EMBOsinglecellbio  #humancellatlasのタグも追って見ると面白いですよ。
EMBOは事務局発表によると320名(167名は日本から、153名は海外から)が参加されたそうです. 

HCAでもそうでしたが、シングルセル解析はだんだんSpatialな情報の発表も多くなってきました。これは組織の「どこで」発現していたのかを大規模に知ることが技術的に可能になってきたおかげです。10xでもこの分野はいち早く取り込み、Spatial Transcriptomics社の買収によって今後大きな貢献をすることになるでしょう。今から楽しみです。


さて、私たちは6月28日(金)、東京秋葉原で10xユーザーグループミーティングを行います。国際ゲノム会議の翌日です。こちらもぜひお楽しみに!
詳しくはこちらを参照ください!



2019年4月10日水曜日

来週アメリエフさんのオープンセミナーでお話しします



来週、4月18日の夕方、アメリエフさんのオープンセミナーにて、10x Genomics についてお話しすることになりました。そのあとのスクラム・松山さんのお話も含めて、シングルセル解析とは? どこに気をつけたら良いのか? など、ウェットの部分を中心にご紹介します。

その後、シークエンス受託会社の話のあと、アメリエフの山口さんから解析部分のお話がある予定です。

普段シングルセルで悩んでいること、聞けないようなことも、ぜひこの機会に質問してみてくださいね。


アメリエフさんのこのページの下の方にある、「お申し込み方法」をクリックして登録してください。
お待ちしていまーす!


シングルセルATAC-Seqのウェビナーはこちら



2019年4月8日月曜日

シングルセルATAC-Seqのウェビナーやります!

今年2回目のGetting Startedウェビナーのトピックは、シングルセルATAC−Seq!

この、Getting Startedウェビナーとは、初心者向けのやさしい内容を、シングルセル解析や10x Genomics の技術をあまりご存知無いかたに向けて、アジア時間で行うシリーズです。

日本語、英語、中国語で同じ内容、同じスライドを使ってプレゼンします。
プレゼンの内容は録画されるのであとで視聴することもできます。ぜひレジストしてくださいね。

日時
4月22日午後3時(日本時間)日本語です! 私が喋ります(緊張)

4月23日午後1時(日本時間)英語です。アメリカの製品担当、ローラが喋ります。外国人の研究者は、英語の方がわかりやすいかもしれませんからオススメします。って、このブログ自体が日本語でした。外国人研究者で興味ありそうな方がいましたら是非登録リンクを転送してください!



シングルセルATAC-Seqを始めよう
高解像度のエピゲノム解析

日本語版登録はこちら

英語版登録はこちら

このウェビナーでは、細胞におけるエピゲノムの多様性をシングルセルの解像度で解析できる、シングルセルATAC-Seq (Assay for Transposase-Accessible Chromatin)について、紹介します。この解析は、数百から数千のシングルセルにおいてゲノムワイドにオープンクロマチン領域解析を行える画期的な手法です。

内容は、

  • シングルセルATAC-Seq解析の概要
  • シングルセルATAC-Seqライブラリーおよびサンプル調製のベストプラクティス
  • シングルセルATAC-Seqを解析するソフトウェアおよび視覚化ツール

です。

このウェビナーシリーズは今後も積極的に続けていく予定です。
どんな内容が良いか、は各ウェビナーの最後のアンケートにて聞かれますので、皆さんのご意見ご要望をどうぞ宜しく、宜しくお願いします!

2019年4月6日土曜日

Spatial の素晴らしさが8分でわかるビデオ

先週のAACR(アメリカがん学会)に行かれたかたはいますか? 私も何年か前に行きましたがあれは巨大な学会ですよね。
最近の国際学会はウェブで中継するところもあるんですね。AACRも一部無料で公開していますし、一部はYouTubeにも載っています!
日本の学会ではまだ、無いですかねえ。

このリンクには無料でオープンプレナリーセッションが公開されています

私が特にオススメするのは、一番最後にある、
Wrap-up and opportunities for the future
John D Carpten
USC Keck School of Medicine, Los Angeles, CA, United States

これです。10x Genomics が昨年末に買収した Spatial Transcriptomicsの良いところがコンパクトかつサイエンティフィックにまとまっています。ビデオの長さは8分弱です。


Spatial Transcriptomicsのアプリケーションはまさにこれからのがん研究を加速する、そんな予感がしますね


2019年3月30日土曜日

新情報アップデート 10x Genomics

ブログの更新は随分とご無沙汰していました。2019年が始まり、アメリカ企業なのでQ1(1月〜3月)が始まり、日本ではこの時期は年度末。会社として新しい計画が動き出すと共に日本のアカデミアでは締めの季節。

もうすぐ新年度も迎えるタイミングですので、この際新情報をアップデートします


2月のAGBTでも発表されましたが、10xでは今年、3つのアップデートがあります。
ひとつめは「免疫プロファイリングデータベースの公開」
20万ものT細胞をターゲットにして、細胞表面タンパク質の発現、抗原タンパクの特異性、5’側の遺伝子発現、VDJ領域の完全長配列、という種類の情報を一度に、同一細胞から得たデータです。こんな大規模な解析は今までなかったと思います。
これがまもなく公開されます。このようなマルチオミクス解析が、Chromiumを使えば誰でもできるようになったのは、NGSが登場した時の衝撃に似ていると思いません?

二つめは「Spatial Transcriptomics」
これは前回も紹介しましたね。無数のウェルが仕込まれたスライドガラス上に、サンプルの切片を固定し、ウェルの中にあるバーコード付きのオリゴでサンプルのmRNAをキャプチャー、その後NGSで読みます。バーコードは各ウェルの位置情報と対応しているので、後でRNAの発現値と位置情報を結びつけて解析することができる、そんな技術です。
組織のどこに、どんな遺伝子が発現していたのかがわかるわけです。
これももう少ししたら具体的に、アナウンスされる予定です

三つ目は「Chromium Connect」
簡単にいうとオートメーションシステムです。Chromiumが内蔵されたサンプル自動化装置で、細胞混濁液を用意しさえすればあとはエマルジョン化からそのあとのcDNA作製〜NGSライブラリ作製まで自動で行ってくれる装置です。
夕方細胞が用意できた、っていう時もこの装置が夜中働いてくれるので、作業効率を大幅にUPできると思います!

と、ここまでのことでもっと詳細を知りたい方は、こちらから、登録してみてください。
10xから情報アップデートがあったらメールでお知らせが行くようになっています。
登録後にはこれらの説明ビデオも視聴できますよ。ぜひどうぞ!